1033話 膨らむ恐怖。帰ってくると約束したのに ページ3
「なぁ……冗談だよな……!?火貂退紅はヤクを嫌ってんだよな左馬刻!?なぁッ!!!」
パニックになってしまった銃兎は自身の感情が制御出来なくなり、縋るように左馬刻の肩を掴み強く揺さぶる。左馬刻の視界に映るのは、顔が真っ青で激しく翡翠の目を揺らす彼。左馬刻は怒りよりも先に、緊急事態の仲間を落ち着かせなければと銃兎の両肩を掴んだ
「落ち着け銃兎!!」
「落ち着いてられるかッ!そんな言葉で渡すモンなんて決まってんだろうがァッ!!!」
「オヤジがそんな事する訳ねぇだろうが!!ウチはヤクはご法度、冗談でも言えば殺されんだぞッ!?」
「んなの分かんねぇだろうが!!やらねぇやらねぇ、そんな事を言いながら堕ちてく奴らを俺は見てんだよ!!」
この状態の銃兎では、言葉で落ち着かせるのは難しい。実力行使で理鶯は銃兎を羽交い締めにし、左馬刻から引き剥がして簡易的にだが拘束する
「銃兎、最初の頃のAを思い出せ。彼女は親方から薬を貰っていた様だが、飲んでいなかった。簡単に危険なモノを口にする可能性は低い」
「それは前の話だろうがッ!!」
声を荒らげ、理鶯から逃れようと暴れる銃兎。彼の頭の中には家族を殺した中毒者と、薬に溺れ自ら命を絶った親友の姿が過ぎっていた
「離せ理鶯ッ!アイツの所に行かねぇとッ!!」
約束した。帰ってきてくれると。
なのにこの恐怖は膨らむばかり。症状が悪化、過呼吸になってきた銃兎に、左馬刻も彼を押さえ舎弟に指示を出す
「おい神崎、廉貞!!テメェらも銃兎を押さえろ!」
「は、はいっ!!」
「分かりました!」
「止めろッ!!クソがッ!!テメェら何で平然としてられんだよォッ!!」
────平然としている訳では無い。
左馬刻も理鶯も、一刻も早く彼女の下に行きたい。出来る事なら乗り込んでそのまま連れ去って行きたい。そんな焦りを噛み殺し、耐えている。
オヤジも筋を通す男、自分の掟に反する人物でない。それに自分の意思で彼女から離れたのだ、筋を通さなければ。
銃兎の気持ちも分かるが、聞き取れた会話から邪道な行いをすると考えにくい。何か考えがある筈、ここで乗り込むべきでは無い
それぞれ、彼女の声を待っていたのだ
「お前マイク渡したんだろ!?それに理鶯と鍛えてんだから、そこら辺の奴らみてぇにくたばんねぇよ!!」
「体ん中に入った時点で遅いんだよッ!!」
必死に抗う銃兎だったが、彼女が抱いていた覚悟は生半可なモノではなかった───
1034話 寂しさは証拠→←1032話 焦り、張り詰めた空間。
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刹那さんの小説ファン - 章公開おめでとうございます!これからもまったりマットリを堪能させていただきます! (1月8日 17時) (レス) @page50 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - 刹那さんの小説ファンさん» ありがとうございますm(*_ _)m 今回の更新で50話分溜まりましたので、次の章公開まで暫くお待ち下さいっ! (1月8日 11時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
刹那さんの小説ファン - 何度もすみません!最新の小説、更新された瞬間に見ることができました!これからも頑張ってください! (1月7日 20時) (レス) @page49 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - 刹那さんの小説ファンさん» 発狂して家宝にするレベルですか!?(笑) そう反応して下さる人は初めてで嬉しいですっ(*¯꒳¯*) (1月6日 22時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
刹那さんの小説ファン - お返事ありがとうございます!嬉しすぎてベッド叩きながら発狂してしまいました。スクショしまくって家宝にしますうううううう! (1月6日 18時) (レス) @page47 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年11月29日 10時