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1049話 らしくない行動 ページ19

『っ……』


銃兎の言葉は続かない。代わりに再び抱きしめる力が強まる
彼の手は声と同じく酷く震えていた。捨てなければと思うのに捨てきれない自身に嫌悪している様だとAは感じた


“捨てきれなくてごめん”


その言葉の意味は、今のAになら理解出来る。同時に彼の心情が痛々しく伝わった。零れ落ちた言葉に込められた彼の葛藤。
Aは彼の頭に凭れる様に頭をコテンと倒す。それでも彼は動かなかったので、Aは動ける範囲で銃兎を抱き締め返した


『銃兎さんは私を捨てたいんですか…?』


Aらしくない少し意地悪な聞き方に、銃兎は思わず彼女から離れて青い瞳を見つめた。そして苦しそうに顔を歪め俯き、強く唇を噛んでいた口から言葉を漏らす


「捨てなきゃ……いけないんです……。貴女が………大切だから…っ」

『でも、出来ないんですか?』

「……はい………傍にいて欲しいんです……。傍で笑ってて欲しい、傍で喋って欲しい、傍で貴女の温度を感じたいんです……」


再び銃兎はAを抱き締めた。今度は向かい合って抱き締めた為、彼女の温度が広く伝わる。その温度が愛おしく、渇望してしまう。否定しなければならないのに、それが出来ない。彼の口から己の弱さ故の苦悶の声が漏れ続けていた


『私は傍に居たいですよ?』

「……俺だって居たいんだ……。だけど、俺らと居れば俺らを恨む奴らがお前を傷付ける。施設に居た時よりも地獄を見るかもしれない。だから本当は離れなきゃいけねぇんだよ……ッ!!」


Aは優しく微笑んでいた。
強まる抱擁に安心感を抱いていた。
だからこそ、彼女はらしくない行動を再び行った






──────ちゅっ、







「なッ!!!?」



理鶯程上手くは無いが、可愛らしい音。
その正体が頬からのリップ音だという事に、銃兎が理解するのにとても時間が掛かった。それもその筈、Aからキスするのは酔っ払った時以来。酩酊した状態でない限りしない行動が、今起こった。
段々と銃兎の顔が赤く染まっていく


「……はっ?い、今、な、何で……!?」


反射的に離れツギハギの言葉で尋ねる彼の目に映ったのは、同じく顔をリンゴの様に赤くするA


『えへへっ、これって緊張しますねっ』


照れくさそうに笑ってモジモジ。今の行動は彼女の中では結構な勇気を使った様に見えた。頭真っ白になった銃兎は、口をパクパクするだけで言葉を生み出す事は出来ず、ただただズレた眼鏡を直す事しか出来なかった

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刹那さんの小説ファン - 章公開おめでとうございます!これからもまったりマットリを堪能させていただきます! (1月8日 17時) (レス) @page50 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - 刹那さんの小説ファンさん» ありがとうございますm(*_ _)m 今回の更新で50話分溜まりましたので、次の章公開まで暫くお待ち下さいっ! (1月8日 11時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
刹那さんの小説ファン - 何度もすみません!最新の小説、更新された瞬間に見ることができました!これからも頑張ってください! (1月7日 20時) (レス) @page49 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - 刹那さんの小説ファンさん» 発狂して家宝にするレベルですか!?(笑) そう反応して下さる人は初めてで嬉しいですっ(*¯꒳¯*) (1月6日 22時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
刹那さんの小説ファン - お返事ありがとうございます!嬉しすぎてベッド叩きながら発狂してしまいました。スクショしまくって家宝にしますうううううう! (1月6日 18時) (レス) @page47 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:刹那 | 作成日時:2023年11月29日 10時

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