987話 ナビゲーションに慣れない彼女 ページ7
「────ンじゃあA、次の目的地教えろ」
『ラジャーです!』
食事を終え、店を出た3人は近くの駐車場に停めてあった左馬刻の車に乗り込んだ。助手席にA、後部座席の中心に理鶯が座りシートベルトをした事を確認した左馬刻は、自身もシートベルトをしてアクセルを踏む
何故か車に備え付けのナビでは無く、Aにスマホのマップアプリで案内をする様に促した左馬刻。後ろで見ていた理鶯は疑問符を飛ばすも口は挟まず、暫く静観する事にした
疑いもせずすんなりと了承したAだが、実際に案内をしてみると徒歩よりも断然早いスピードに慣れない。最初こそ指示のタイミングを間違えたりしたが、予定より数分遅れで目的地のスーパーに辿り着いた
スーパーの立体駐車場。太陽の光が差し込みにくいその場所は暗く、少しジメッとしている。そんな中で3人は直ぐには車を降りる事をせず、深い溜息を吐きながら僅かに沈んでいくAを見やった
『な、なんか疲れました……!!』
「ぶははっ、お前最後まで必死だったな」
『アプリを見ながら説明するって難しいです…!!』
「“そこを右……と思いましたが違いました。”と言われた時の左馬刻の反応速度は流石だな」
「フハッ、たりめーよ。こちとら伊達に深夜のカーチェイスしてねぇんだわ。つーか、語彙力を鍛える為に良いかと思ったが、俺様の腹筋が鍛えられたわ。笑って前が見えやしねぇ」
『だってアイコンが急にギュンッて後ろに進んだんですもん!!』
「残念だが左馬刻の思惑通りにいかなかったな」
「ギュンッてなんだよギュンッて。ラップでンな言葉使おうもんなら笑われるぞ」
「上手く使えるのなら問題ないが……。どうだ、その言葉で韻を踏んでみるか?」
『きゅ、急ですね!!?』
「面白そうじゃねぇか。おら、俺様を唸らせてみろよ」
突然の無茶ぶりに焦るA。ただでさえ案内で疲れているのに、素人には高度な事を要求されて必死に頭をフル回転。恥をかかない様に臆せずハッキリとした声でリリックを紡いだ
『こほん……。“ギュンッて動く定まらないアイコンに辟易。運転中の左馬刻さんに迷惑を掛けたのは分かってるけど、既の所で謝って訂正したんですから良いじゃないですか!”』
「おー、意外と踏めてンな」
「そうだな。感想になると語彙力は低下するが、いざラップをすると言葉は出るらしい」
『ふっふーんっ!これでも日々こっそり練習してますからね!』
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年9月29日 19時