1027話 この俺が見逃してやってんだ……ッ ページ47
「おいッ!左馬刻!!」
ドスを引き抜くと呆気なく部屋を出ていったリーダー。銃兎が声を荒らげ呼び止めるも、足音は遠くなって行った。
それを確認した理鶯は抱き寄せていたAを離し、心配するように眉を下げ彼女の頭を撫でる
「A、小官達は別室に移動する。何かあれば直ぐに駆けつけられるように待機しているから、身の危険を感じたら大声を上げろ」
『はい!分かりました!』
「お、おい理鶯ッ!!」
理鶯も圧を出していた割にリーダーに続いてあっさり部屋を出て行ってしまう。銃兎は抑えきれない怒りで顔を歪ませているが、理鶯だけは見ていたのだ。──左馬刻が自身の感情を抑え込む為に歯を食いしばり、ドスを握り締める拳も酷く震えていたのを
自身が従えるリーダーが、あのとっぱもんの左馬刻が耐えたのだ。だから己も従わなければならない、そう判断しての事だった
「入間を連れて行け」
「わ、分かりました……」
「入間さん、申し訳ありませんが此方へ……」
退紅がそう指示すると、恐る恐るという形で声を掛けた舎弟2人。まだ抵抗の意思が無くなっていない銃兎はAの腕を掴み、2人から距離を取った
「テメェらは本来取り締まわれる存在なんだよ。この俺が見逃してやってんだ……ッ」
『じゅ、銃兎さん……』
怒る様に強く鳴り響くサイレン。腕を掴む銃兎の手は震えていた。怒りか悲しみか恐れか。分からないAは戸惑いながら名前を呼ぶ
銃兎は奪われない様に、失わない様にAを抱き寄せて、空いた手でマイクを構えた。マイクが近づく口からは、はぁはぁ……と苦しそうな呼吸が聞こえている
「恐喝罪、銃刀法違反で現行犯逮捕だ………ッ。今まで俺が揉み消した犯罪全部証拠もあんだよ……ッ!!全員豚箱に──」
『銃兎さんッ!!!』
衝動に囚われた銃兎の手──マイクを握る赤い手に細く小さな手が重なる。それはか弱く、簡単に振り解ける筈だ。なのに銃兎は固まり、瞳孔が開いた目は青い目と視線が交わる
『銃兎さん、大丈夫です』
「何が大丈夫なんだよ!相手は極道だッ!こっちの常識なんてねぇモンなんだよ!!」
『約束しますからッ! 絶対何かあったら叫ぶって。逃げるって。───銃兎さんの下に生きて帰るって』
重なっていた手が離れ、小指をピンッと立てられる。それは子供騙しの“指切りげんまん”だ。誓約の力なんて、無いに等しいモノ。それでも純粋な微笑みを見てしまえば、銃兎の感情はどうしようも無くなってしまう
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年9月29日 19時