1026話 オヤジだろうが地獄を見せてやンよ ページ46
理鶯の腕に力が込められる。それは怒りからでは無く、危険因子から護らなければならないという無意識の行動。必然的に理鶯の胸元に顔を埋める形になったAは、思い詰めた表情で目を伏せた
横顔だけだがその表情を見た退紅は、彼女に声を掛ける
「そのままでいいから聞けA。“マイク狩り”は火貂組に影響を与えたのは確かだ。だがお前のやった行為の殆どは火貂組にとって利益になる事の方が多い。ケジメを付ける必要なんざ最初からねぇよ」
「ッ、それなのに不気味だったという理由でしやがったのか!!他に方法はあっただろうが!!」
退紅の言葉で今度は銃兎がスピーカーの出力を上げる
銃兎の怒りは尤もだ。あまりにも危険で無意味な脅し。それが護りたいと強く思う人物に対して行われたのだから。
未だに張り詰めた空気は続く
「すまねぇな、俺ぁこんな世界を生きちまってるから加減ってのは下手らしい」
「オヤジ、理鶯はなんか殺る気無くしちまったが、俺様は簡単に許せねぇ。1ヴァース喰らいやがれ。ンなのじゃ全然足りねぇけどな」
紅と翠は刃の様に退紅を突き刺す。その目を順番に見た退紅は、口元に手をやり少し考え込んだ
そしてとんでもない事を舎弟達に言い渡す
「額繋、神崎、左馬刻ら3人を別室に連れてけ」
「「お、オヤジ!!?」」
この状況で3人を連れてけなんて出来る訳が無い。プレッシャーが凄まじく圧倒されっぱなしだった舎弟の2人は思わず声を揃えた
「ざけんなオヤジ!今の見せられてAを置いて行けるかっ!!」
「我々は抵抗しますよ。………こっちは腸が煮えくり返ってんだよ、テメェの言う通りに動かねぇ」
「小官も同意見だ」
抵抗の意志を見せる3人だが退紅にとって想定の範囲内。彼は刺したドスを引き抜くと鞘に収め、左馬刻の方へ放り投げた
「ただお嬢さんと真剣な話をしてぇだけだ。危害は加えねぇ。それでも信用ねぇってなら、そのドスを持っとけ。俺の喉を掻っ切る為にな」
退紅の目は真剣だ。長い付き合いの左馬刻は、その言葉が嘘じゃない事は嫌な程に伝わってしまう。
出来れば言う通りに動きたくない。しかしこの状態の退紅は絶対に譲らないのも知っている。左馬刻はマイクを仕舞いドスを持つと、鞘から抜き出して感情の勢いのままテーブルへ振り下ろした
ドンッッッ!!!
「かすり傷1つでもつけてみやがれ。オヤジだろうが地獄を見せてやンよ…」
それだけを吐き捨てると左馬刻は1人で先に部屋を出ていった
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年9月29日 19時