1025話 不気味な目 ページ45
─────ドスンッ!!!
テーブルに深くドスが突き刺さる。
その刃は血に濡れていない
『り、理鶯……さん……?』
ドスが刺さる直前、理鶯がAの座るソファを回転させるように強く蹴り飛ばし、その勢いで差し出していた手が自身の方へ向けられると即座に掴んで力の限り引き寄せた
無言で抱き寄せられたAは漸く表情を動かし、戸惑いの色を出して彼の顔を見上げる。退紅を射抜く理鶯の目は戦場の兵士のソレで、今にも敵を殲滅するプレッシャーがあった
「火貂退紅、ドスの位置を見るに指を落とすつもりは無かったな?」
左馬刻と銃兎が状況整理の為に固まっている中、圧が込められた声で理鶯は尋ねる
理鶯の言う通り、最初Aが置いていた手の親指と人差し指の間──比較的スペースのあった場所にドスが刺さっていた
「危ねぇじゃねぇか軍人の兄ちゃん…。1本どころか2本以上落とすところだったぜ?」
「それは脅しの範囲から逸脱している。貴様はカタギ相手にもその様な事を行うのか?」
理鶯の瞳孔は開いている。退紅の行動は、彼にとって戦端が開かれたと同義。いつでも目の前の敵を殲滅する気だ
ここまでキレている理鶯を見るのは、左馬刻と銃兎は初めて。だからこそ戸惑い、退紅と理鶯──双方の様子を窺っていた。冷たく重い空気、それでも退紅は大きな笑い声を上げた
「ハッハッハッ、随分と入れ込んでンじゃねぇか。俺ァ、その目が嘘じゃねぇか試しただけだ。あまりにも不気味に思えたんでな」
「不気味だァ…?」
「だが気の所為だったみてぇだ。悪かったな、やり過ぎだったろ。どうするお前らは?この俺を豚箱に入れるか、ここで殺るか?」
未だに退紅は笑みを浮かべて余裕の表情。流石は火貂組組長と言うべきか。退紅の言う“不気味”の意味は、左馬刻と銃兎には分からない。しかし理鶯は、理鶯だけはその意味を悟る。
理鶯は瞳孔が開いた目を閉じ、感情を落ち着かせる為に深呼吸。マイクを仕舞い、戦意を無くした目を開いてそのまま口を開いた
「いや、その必要は無くなった。だが再び同じ事をするならば、即座に殲滅する」
「肝に銘じておかねぇとな。さっきの動き、目を見張るモノがあった。鍛錬は欠かさずやってンだな」
「小官は軍人だ。鍛錬を怠る事は無い」
「ハッハッ、敵に回すと面倒なタイプだ。左馬刻、良い逸材を仲間にしたじゃねぇか」
「お、おう……」
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年9月29日 19時