1024話 ケジメ、償い。 ページ44
「A、といったか。お前の目は怯えもなけりゃ焦りもねぇ。まさかと思うが、ケジメを付ける気でここに来たか?」
『はい』
「っおいA!?」
即答、音の揺らぎすら無い。先程まではあんなに怯えていたのにあの一瞬で何があったのか。3人が目を見開かせ彼女を見たが、Aはただ一点──退紅だけを見つめ言葉を続けた
『如何なる理由があろうと、私は自分の意思で“マイク狩り”を行った事に違いありません。こうして左馬刻さん達と関わり続ける以上、何かしらのケジメを付けなければいけないのであれば、受け入れる所存です』
あまりにも覚悟が決まった目、言葉なので、3人は止めようにも適切な言葉が見つからない。だが彼女を護るという使命感は強く胸の中にあり、彼女の意思に反したとしてもマイクを構える事は止めなかった
どう出るのかと3人の鋭い視線が刺さる退紅。彼はAを見据えたまま懐からドスを取り出した。
ゆっくり鞘から抜かれたドスはギラリと光を鈍く反射し、刃を冷たく輝かせる
「おいオヤジ……!!コイツはカタギだろうが…!!」
「左馬刻、女が大事なのは分かるが、覚悟を無駄にしちゃあいけねぇよ。入間、毒島、お前らもな」
「生憎私は警察でして。一般市民に危害を加えるのであれば豚箱行きにしてあげますよ」
「小官は軍人だ。それ以上の行為は力ずくで止めさせてもらおう」
ヴゥン……と3つのヒプノシスマイクが起動する音が狭い部屋に反共する。直ぐにでも争いが起こる状況。それを止めたのは慌てている舎弟でもなく、退紅でもなく、Aだった
『左馬刻さん、銃兎さん、理鶯さん。私は大丈夫です』
この後に何が行われるのか分からない筈はないのに、Aの調子は変わらない。安心させるように微笑む訳でも無く、恐ろしい程に無表情
「バカかお前!指詰められんだぞ!!」
「そうですよ!そんな償い方は間違ってます!!」
『ですがそれでは火貂組の方々は納得しないですよ。そもそも私は許され過ぎてるんですから』
青い瞳にはしっかりと光はある。諦めがないどころか譲らない頑固さを持っている
彼女は徐に前のテーブルへ右手を差し出した。早く指を持っていけ、と言わんばかりに
「A、それは小官が認めない」
ミサイル型のスピーカーの出力が大幅に上げられる。彼女を叱咤する様なビート、それでもAは動かない
焦る3人の口にマイクが近付く。その瞬間、退紅は老体に合わず素早くドスを振り下ろした────
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年9月29日 19時