【ヒプマイ】オートマタ・イストリア -20章- 始まるDRB予選 (ページ43)

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1023話火貂退紅ページ43

｢───よぉ……態々来てもらってすまねぇな。俺の名前は火貂退紅だ｣

廉貞が案内したのは応接室。壁には大きな“不撓不屈”の掛け軸があり、火貂組の在り方を静かに語っている。
部屋の中心に傷1つ無い光沢のある漆塗りされた黒色のローテーブル。挟むのは2台横並びになった高級感溢れる黒色の1人がけソファ

ソファには退紅が座り、後ろに舎弟の神崎と廉貞を立たせている。一方で彼と向き合って座るのは左馬刻とA。銃兎と理鶯は後ろで立って手を後ろに組んでいた。マイクを握りながら

退紅が簡単な自己紹介をすると、今度はAが口を開かせる

『いえ、こちらこそご丁寧に迎えて下さりありがとうございます。私の名前はAです。戦争孤児だった為、苗字はありません』

あの火貂組の組長が目の前にいるのにも関わらず、臆するどころかしっかりと相手を見据え凛とした声で返す。真剣な面持ちな左馬刻と銃兎と理鶯だが、心の中では彼女の態度含め、苗字が無い理由を自然と嘘で答えた事に驚いている

静かに見守っていた舎弟の2人も、彼女の淡々とした言動に思わず驚きの色を顔に染めていた

｢ほぉ……随分と肝が座ってんじゃねぇか。嫌いじゃねぇぜ｣

『お褒めに預かり光栄です』

退紅はジロリとAのつま先から頭のてっぺんまで品定めをするように視線を動かす。特に怪しいところはない。だが異質な雰囲気を退紅は感じ取る。
ただ女を連れて来いと言っただけなのに銃兎や理鶯も態々同行し、左馬刻も表情こそいつも通りに思えるが、目だけは初めて会った時のような誰彼構わず傷つける危険な鋭さを宿していた

左馬刻だけでなく銃兎や理鶯すらも魅力する女、只者じゃない。この僅かな時間だけでも興味深い情報を得れた退紅は、不敵な笑みを浮かべる

｢お前……例の“マイク狩り”に関わってたらしいじゃねぇか｣

───この言葉により一瞬で部屋の空気が張り詰めた

即座に理鶯と銃兎はマイクを構え、左馬刻は護る様にAを抱き寄せてマイクを取り出す。完全な臨戦態勢、如何に3人がAを大切に思っているのか見て取れた

元々戦う意思がない舎弟達は戸惑ったが、退紅の目は3人ではなくAだけを睨み据える

左馬刻に護られてはいるが、彼女も逸らさずしっかりと退紅の目を見据えていた。脅しの響きもあった、なのに彼女は怯えるどころか立ち向かう様に真っ直ぐと見つめている

そんな姿に退紅は鋭く目を眇めた