1021話 パニックなMTC ページ41
「それいつの話なんだよ!」
「今だ、オヤジ待ってンだわ」
「早過ぎるだろド間抜けがァ!テメェ、今は近くにいねぇとか誤魔化せや!!」
「るっせぇな!!無理だったんだよッ!今日も弁当だったから近くにいるだろとか言われたら逃げ道ねぇだろうがァッ!!」
「バレてんじゃねぇよクソアロハがッ!!浮かれて周りが見えなかったってか!?ア゙ァ!!?」
Aが驚きのあまり放心状態の目の前で、左馬刻と銃兎が取っ組み合いを始める。完全にパニック状態だ
その中でも唯一落ち着いているのが軍人──理鶯である。彼は腕を組んで僅かに俯き、静かに思案した後に喧嘩中の2人に声をかけた
「左馬刻、銃兎。貴殿らが争っても意味が無い。ここはどう乗り越えるかを考えなければならない」
穏やかじゃない表情と声の圧にひるんだ2人は思わず取っ組み合った状態止まり、視線を向ける。確かに理鶯の言う通りだ。大人しく喧嘩を中断し、腰を下ろす
それを確認した理鶯はAの方を向き、落ち着かせるように頭を撫でる
「大丈夫だA。火貂組の組長と聞くと恐ろしいかもしれないが、左馬刻の組織のトップ。きっと仁義を重んじる人物だろう。それに、何があっても小官が貴女を護ってみせる」
先程とは変わり、温かく包容力のある声色で語りかける。フリーズしていたAも徐々に解れ、不安げではあるがゆっくりと理鶯を見た
『大丈夫ですかね……。私、指詰められますかね……?』
「流石にそれは無いと思いますが……」
『心当たりあるんですよ…“マイク狩り”……』
か細い声で告げられたソレは、3人の記憶に忘れ去られていた事件。
Aが初めて外へ出た為に、善悪の区別がつかず犯罪に手を染めていた。それは裏社会でも影響を与えてしまった事。裏組織の取引に乱入し、違法マイクを奪い売り捌く。彼女は奪う仕事をこなしていた。つまり、火貂組にも影響を与えていた可能性がある
失念していた3人は揃って「あっ……」と言葉を零し、顔を引き攣らせた
「いや、待て待て待てッ!それはねぇだろ!!俺らの組はシノギに違法マイクなんざ扱ってねぇし、ヤクも扱う訳ねぇ!!」
「そ、そそそうですよ!!だから大丈夫ですって!」
「貴女は火貂組にいた裏切り者の手掛かりを言ったのだぞ!?寧ろ感謝されるべきだ!!」
あの理鶯ですら慌てる事態。無情にも時間は進み続けている。心は落ち着くどころか騒がしくなる一方であるが、4人は仕方無く火貂組の事務所へと向かった
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年9月29日 19時