1020話 いつ起きてもおかしくなかった事態 ページ40
Aの事が知られれば敵対する奴らに攫われる可能性が上がってしまう。だが銃兎と理鶯と比べると感情が表に出やすい左馬刻は、何とか隠す為に嘘では無いギリギリの言葉で返す事にした
「はぁ……別に出来てねぇよ」
背もたれに深く凭れ、呆れる様に溜息を吐く。限りなく自然だが、遊ぶ様に追い打ちを掛けてくるのがここの組長だ
「なら片思いか。カタギに迷惑を掛けねぇなら俺は応援するぞ?」
「ブッ、別に応援なんざいらねぇしそんなんじゃねぇわ!!」
「まぁ俺に正直に話すのも恥ずかしいだろ。そういう事にしておこう」
「ぐ……違ぇってのに……。話がそれだけなら帰るぞ。ったく、オヤジの揶揄いに時間使わせやがって」
てっきり重要なシノギだと思った左馬刻は拍子抜けし、疲れがどっと溢れてきた。
今日は銃兎の家に泊まっているA。気分転換に顔を見に行くがてら、一応銃兎らにバレそうになったって事を伝えなきゃな。と、この後の事を憂鬱に思いつつ立ち上がろうとすると、退紅は右手を上げ止まる様に促した
「あぁ待て待て、それだけじゃねぇんだよ」
一刻も早く向かいたい左馬刻。普段なら“うるせぇ”の一言で反発出来るのだが、相手は火貂組の組長。それは不可能。面倒くさそうに座り直し、イライラを見せつける様に腕を組んだ
「じゃあさっさと言いやがれ」
どうせ下らねぇ事だな。そう踏んでいた左馬刻の目を刺す様に見据える退紅。
途端に空気が重くなり、舎弟は後ろ姿を見ているだけなのに僅かに足が震え、あの左馬刻ですらゴクリと生唾を飲み込む。先程の穏やか表情は無く、火貂組組長としての威厳が放たれている。そんな口が重々しく開かれ、左馬刻を驚愕させる言葉を突きつけたのであった
「────その女をここに連れてこい」
・
「────つー事だ。」
「つー事だ、じゃねぇよこのクソボンクラ!!何カタギのAを巻き込んでんだよ!!」
「しゃーねぇだろうが!!オヤジが連れて来いっつってんだから連れて来るしかねぇだろうが!!」
場所は変わり銃兎の自宅。
今日は休日でゆっくりAと平和を過ごそうとしていた銃兎のスマホが突然震えた。それはMTCのグループチャットからで、左馬刻から“緊急事態だ、銃兎の家に集合な”と大事を思わせる文が届く
理鶯も何事かと即座に家に訪れ、最後に汗だくでやって来たリーダーの言葉を聞けば、次に響いたのは銃兎の怒鳴り声だった
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年9月29日 19時