1016話 心臓に悪過ぎる目覚め ページ36
Aに甘過ぎる男はとんでもない提案をしたが、流石に2人は受け入れる事が出来ない。内心出来る事ならしたいのだが、不安要素や、自分の立場を考えると厳しいモノがある
折角口にしてくれた答えだが、実現は難しい。なので理鶯は彼女の手を握り締めながら優しいテノール調で伝えた
「すまないがその願いを叶える事は難しい。だがなるべく3人が揃い、貴女の傍に居ると約束しよう」
そう言って微笑むと、小さい手の甲に口付けをした
「はぁ!?おま、何ナチュラルにキスしてンだよ」
「何か問題でもあるのか?」
「似た事を我々もしてますから文句は言えませんが、その、流石ですね……。自然すぎる……」
「ふふ、Aと小官の仲だからな」
「誤解を招く言い方すんじゃねぇよ」
3人の小さな言い争いの所為か、手の甲の擽ったさの所為か、微睡み状態だったAの脳は段々と覚醒する。半開きだった瞼は完全に開かれ、パチパチと現状把握の為に忙しなく瞬く。そして固まり─────
『いやぁああああ!!!』
急な3人の帰宅、至近距離、スマホ撮影、自分が2人の手を握っていた、朧気に記憶にある理鶯からのキス等々、寝起きには刺激の強すぎる情報量にパニックになったA。突然大声を上げて2人の手を離し、ラビ君を抱き締めて顔を隠した
「おーおー、Aチャンよォ。家主が帰ってきたのに悲鳴とは随分なアイサツだなァ?」
「それに加えそのぬいぐるみを盾にするなんて。全く酷いですねぇ?」
「小官達が聞きたかったのはそんな声では無かったのだが」
いつかはそうなると分かっていた3人だが、性格の悪い男達である。1人は悪い笑み浮かべ、1人は態とらしく悲しい表情を、1人は軽く眉間に皺を寄せ不機嫌に。それぞれのやり方でからかい始めた
『いや、あの!!こ、これは!!えと!!』
「ぶはははっ、お前どんだけパニックになってんだよ。ただ俺らが帰ってきただけだぜ?つーかそろそろ顔を見せろ」
『いやぁあ!!ダメダメダメです!!恥ずかしいですしちょっと落ち着かせて下さい!』
「おや、私がずっと撮影してるのに止めなくて良いんですか?」
『ぎゃあああ!いつから撮ってるんですか!!』
「そうですねぇ、一部始終?」
『削除求めます!!』
「それは認められないな。諦めろ」
『何で理鶯さんが言うんですか!』
Aが目覚めた途端賑やかになる部屋。3人は比較的賑やかなのは苦手なのだが、この賑やかさは心安らぐ好ましいモノだった
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年9月29日 19時