1015話 弱点を無意識に突く彼女 ページ35
「ハッ、睡魔と戦いながら文字打ったってか?勉強熱心でちゅねー」
「恐らく録画機能を使ったのだろうが、ここまで聞き取るとは流石だな」
健気な行動に我慢出来なかった2人は、Aの頬を突っついたり頭を撫でたりし始めた。銃兎もその中に参加したかったが、ちょっかいを出される彼女の顔が面白かったのでスマホの動画撮影を始める
「おい銃兎、それ送れ」
「理鶯からは動画を頂きましたが、左馬刻からは確か頂いていませんねぇ?何かあります?」
「とっておきあンぞ」
「ふふっ、例の動画か。確かにあれはとっておきだな」
彼女が寝てる間に恒例の取引が行われた。実の所本人達も誰から貰い、どれだけ送ったかを完全に把握はしていないのはここだけの話。
それ程彼等のスマホのフォルダには数え切れない思い出が収められている。殺伐とした日常の中の小さな平和。こうして3人が交換し合うのも仕方ないのかもしれない
『んぅむ……む……』
眠りの邪魔をされていたAは漸く瞼を開けた。だが熟睡からの急な目覚めなので、頭はぼんやり微睡んでいる
そのままぼーっと3人の顔を見たAは、嬉しそうに表情を綻ばせた
『えへへ……』
ラビ君を抱き締めていた手を伸ばすと、自分にちょっかいを出していた左馬刻と理鶯の手にそれぞれ優しく触れ、ぎゅっと握り締める。残念ながら撮影をしていた銃兎は触れられる事はなかったが、代わりに幸せそうな顔を彼に向けるのだった
「ん゙んっ!!!」
「ングッ、」
不意打ちをモロに食らった左馬刻と銃兎は殴られた様な声を出しながら天を仰ぎ、理鶯は満面の笑みで触れてきた手を両手で握り返した
「愛おしいな」
「この前の弁当と言い、我々の弱点を突いてきますね……っ」
「早く帰ってきた甲斐があったぜ……。やっぱ俺の家に住ませてぇ……」
「それは認められないぞ左馬刻。DRBの間という約束だ」
「何故決定権が理鶯にあるのかは分かりませんが、私だってAさんには私の自宅に住んで欲しいと思いますよ」
「るっせぇな。ンなのAの意見も聞かねぇとだろ。な?Aはどうしてぇ?」
「お前寝ぼけてるAさんに聞くのは反則だろ」
大人げない男に話を振られたA。まだ現実と夢の間を彷徨う彼女なのだが、にへら……と溶けた笑みを浮かべてたどたどしく答えた
『みなさん…と……いっしょ……がいい……えへへ』
「あーやべ、お前ら一緒に住むか」
「ど間抜けが。お前らと一緒は俺の胃が死ぬ」
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年9月29日 19時