1014話 家にいた子猫? ページ34
3人が左馬刻の自宅に辿り着くと早速玄関の扉を開ける
きっと笑顔で走りながら出迎えてくれるだろう、と踏んでいたのだが、走って来る様な音は聞こえない。寧ろ静かで誰もいないのかとすら感じる
しかし足元を見ればちゃんとAの靴はある。つまり居るはずなのに、出迎えてくれない。
心做しか3人の表情は少し寂しそうなモノに変わる。流石に待ち続けるのは虚しいので、靴を脱いでリビングまで歩いて行った
「オイA、俺らが帰っ───て………」
リビングの扉を開けた家主は、不機嫌な声で出迎えなかった人物の名前を呼ぶ。しかし最後まで言い切る前に、視界に入った姿で言葉が詰まった
「左馬刻、何かあった──な……」
「2人共どう──」
遅れて入った仲間2人も続けて言葉を詰まらせる。そして表情を緩ませた
『すぅすぅ………んぅ……』
恐らく少し前まではテレビを見ていたのだろう。ソファの角で器用に丸まって寝ているAがいた。安らかな寝息を立てながらもしっかりとラビ君を抱き締めて寝る姿は、眩しくて顔を隠す猫の様
先程までの虚しさや寂しさなんてスーッと消え失せ、代わりに心を鷲掴みされる感覚がした
「おい、俺様の家に猫がいンぞ」
「可愛らしい猫だな」
「おやおや、お昼寝だなんて子猫ですねぇ」
ちゃっかり音の出ないカメラアプリで写真を撮りながらAに歩み寄る3人。足音は普通に出ているが、まだ彼女は夢の中である
「中継をはしゃぎながら見てたんでしょうね」
「観客も凄い熱量ではあった。恐らくAも負けない程に体力を使ったのかもしれないな」
「ハハッ、絶対ェこのウサギと喋ってただろうな」
ちょっかいを出したい気持ちをぐっと堪え、見るだけに留めた3人は床に腰を下ろした。左馬刻と理鶯はじっとAの寝顔を見ている中、銃兎はAの頭から少し離れた位置に置いてあったスマホに気付いた
手に取ればまだ画面が点いていて、彼女は何かをしている最中に寝落ちしたのかと推察する。プライバシーの侵害と怒られ兼ねないが、好奇心が勝り悪い笑みを浮かべながら中身を確認した悪徳警官。直ぐに表情が変わり、慈愛を含ませた息を小さく吹いた
「ふふっ」
「あ?どーかしたのか?」
「これを見てみろ」
そう2人に画面を向けた。
その画面にはメモアプリが開かれたままで、3人のリリックが全て書き収められていた。それだけではなく、どう韻を踏んでいるのかも書かれており、熱心に勉強をしていた様だ
1015話 弱点を無意識に突く彼女→←1013話 大勢の歓声よりも聞きたい声
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年9月29日 19時