1011話 弁当は必然的に皆を集める ページ31
─────場所は戻り、とある山の中の広場。
『ど、どうですお味の方は!!』
「うん、とても美味しい。流石だな。小官の方はどうだ?」
『勿論美味しいですよ!!パクパクイケちゃいます!!』
2人だけの空間で食事を楽しむ理鶯とA。そこは花に負けない程に華やかな笑顔で感想を語り合い、時を過していた
そよそよと彼等の頬を撫でる風、暖かく包む太陽の光、心安らぐ草木の揺れるBGM。平和そのものの場所は、動物達もひっそりと陰から見守っていた
そんな自然の中で、似合わない電子音が理鶯のポケットから鳴る
「む、誰かからメッセージが来たらしい」
画面を点け、確認してみるとメッセージアプリから左馬刻と銃兎のメッセージが届いていた。別々の場所にいる2人の、同時期に送られた文の筈なのだが、全く同じ内容に思わず理鶯はくすりと笑みを零す
鹿の肉を頬張ったAは不思議そうに首を傾げた
『んむ?』
「ふふ、すまない。2人からだが、今日の夜ここに来るらしい」
『ごくん……。そうなんですね!楽しみです!』
「“今日絶対そっちに行く”か……。強い意志を感じるな」
『あ、ホントだ。しかも一字一句違えず、ですね……っ!!』
何がそんなに可笑しいのかと理鶯にピッタリ引っ付きスマホを覗き込むと、理鶯の言葉通りの文が2連続に表示されている。表情なんて見えない筈なのに感情が篭もりまくってるので、圧倒されたAは表情を強ばらせた
「そうなればディナーの準備をしなくては。A、手伝ってくれるか?この前のフランス料理から学んだディナーにしようと思うのだ」
『ほうほう!全力手伝います!!何をすれば良いですかね!?』
「そうだな────」
────この後2人は遠足をお開きにすると、早速狩りに赴いた。鹿や猪、山菜、虫。様々な材料達を仲良く採り、2人の喜ぶ顔を想像しながら特別なディナーを作った
左馬刻と銃兎が野営地で着いた頃にはディナーは完成し、テーブルに並べられていた。材料はいつも通りだが、見た目は完全にフレンチのソレで、敷かれたテーブルクロスも純白なモノ
暗くなり辺りを照らすはほんのりと揺らめく焚き火。料理を包み込む暖色は食欲を唆らされる。2人にとっては非現実過ぎて戸惑うのであった…………
「お、おい銃兎……ッ!!俺様覚醒しちまった……!!自力でマシに見える様になっちまった……!!」
「お、俺もだぞ左馬刻!!行く道中違法マイクにやられたか……ッ!?」
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年9月29日 19時