984話 合流するヤクザ ページ4
愉快そうに見下ろす赤い瞳は、最初Aへ向けると直ぐに理鶯に移し鋭く細められた
『あっ、こんにちは左馬刻さん!』
「左馬刻か。よく此処が分かったな」
「たりめーだろうが。こんな目立つ場所に来やがって。SNSでテメェがファミレスに来てるって話題になってたわダボ」
左馬刻はAに自身のスペースを開けろと目配せし、察した彼女はささっと素早くスペースを確保する。溜息を吐きながら彼女の隣に座れば、スマホを取り出しあるSNSアプリを開いてから理鶯に見せ付けた
その画面には恐らく周りのファンが撮ったであろう食事中の理鶯があらゆる角度で映っていた
「マジでビビったわ。舎弟が慌てて俺様に言って気やがったしな」
「安心しろ。小官達の事をよく思わない人物がいる事を警戒し、彼女の名前は一切呼んでいない」
『ほ、ホントですね!!』
「そういう事じゃねぇんだわボケが」
特に気が付かなかったが、言われてみれば名前を呼ばれていないと理鶯の警戒心に感激したA。しかし左馬刻が言いたいのはそこでは無い。ズレた感性は今に始まった事ではないが、思わずいつもと違う暴言が出てしまった
「つーか、何でお前らがこんな所に居ンだよ」
「小官がそのデザートを彼女に食べさせたかったからだ」
「どういう理由だ」
頬杖を着いた左馬刻は、視線だけAに向ける。左馬刻が来た事が嬉しいのかニコニコとしながらモンブランを食べるAの頬は大きく、幸せそうにプニプニ膨らんでいた
彼女の顔の後ろに浮かび上がるハムスターの幻。無意識に左馬刻の人差し指はAの頬に沈んでいた
『むぐっ、ちょっと左馬刻さん突っつかないで下さいよ』
「おぉ悪ィ悪ィ、何か柔らかそうだったからつい」
「ふふっ。今の彼女も可愛らしいが、そのモンブランが来た時はもっと可愛らしかったぞ」
「あー、ここのモンブランは目の前でクリームが絞られるんだっけか?ははっ、絶対ェガキみてぇにはしゃいでただろうな」
『そそそんな事ありませんよ!』
「なぁ理鶯、撮ってねぇのか?」
「勿論撮っているが、貴殿に見せる事は出来ないな。何か対価を要求しよう」
毎回恒例の動画交換。Aはまたか……と遠い目をしている横で、左馬刻は不敵に笑い返した。チラリと覗かせる白い歯、ゆっくりとそれが開けられると短い言葉
「とっておきがあンぜ?」
「何?」
『え、何ですかそれ!?変なのじゃないですよね!?ね!?ねぇ!!?』
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年9月29日 19時