1006話 毎回俺様を喜ばせて来やがるな ページ26
車を走らせて数分、俺はとある場所の駐車場に車を停めた。澄んだ青が広がる空、眩しい太陽、その光を受け輝く海はまるで大きな宝石
海なんてヨコハマの住人からすれば身近だ。だが俺様にとって此処は特別な場所。
────Aを初めて連れてきた海。まだ俺に怯えていたアイツをここに連れて来れば、子供のようにはしゃいで笑顔を見せてくれた場所。今日は海辺までは行かねぇが、車内からでも充分に景色は見れる
平日だがチラホラと人が砂浜で水遊び等をして楽しんでいる。そんな光景を見ながら、昔の事を思い出した
………あン時いきなり海水飲んでたなァ……。つーか、温泉も飲もうとしやがったし、気になったモン口に入れるとかマジで餓鬼だったじゃねぇか……
常識を知らない故にぶっ飛んだ行動を起こしてたAも、今では一般常識をちゃんと頭の中にインプットしている。といっても近くにいンのが理鶯だから、俺の知らねぇ間にヤベェ事覚えてる可能性がある。虫の過食部分とか覚えた所為で急に街中で食べてねぇ事だけは祈る
ンな話は置いとく。これから大事な時間だ。銃兎と理鶯も貰ってるってのは未だに気に食わねぇが、Aが俺様の為に作ってくれた弁当、それを食べる。邪魔は誰にもさせねぇ
胸の中がザワザワして落ち着かねぇがきっと楽しみにしてるからだろう
「さぁて、どんな弁当が────って、ンだこれ」
バックを開ける手が不意に止まる
弁当が楽しみ過ぎてAが目にも留まらぬスピードで何かを入れていた事を今まで忘れていた。弁当箱の上に置かれた小さな紙。“左馬刻さんへ”とアイツの字で書かれてっから、きっと手紙だろう
健気なこった。周りからすれば小せぇサプライズに見えるが、俺にとったら大きい小せぇ関係ねぇ。A限定だが、された時点で素直に嬉しいモンだ。照れくせぇからあんま態度には出さねぇが
何が書いてンのかと早速開く─────。
“左馬刻さんへ
シノギ、お疲れ様です。
実の所シノギというモノは本で得た知識しかありませんが、雑誌で活躍はよく見かけます。中華街で現れた強盗を追い払ったとか、みなとみらいで起きた乱闘事件も収めたとか。
銃兎さんと理鶯さんとは違った形でヨコハマを護っている左馬刻さんのおかげで、私は平和に外に行けると思ってます。ありがとうございます。
お肉を食べて昼からも悪い奴らぶっ飛ばしてください。
Aより。”
「ハハハッ!アイツ面白ェ事書きやがンな。笑っちまったわ」
1007話 名案思いつく若頭→←1005話 舎弟には隠したかった若頭
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年9月29日 19時