1004話 貴女は小官の上を行ってしまう ページ24
─────“理鶯さんへ
いつもヨコハマの治安維持の為に裏で働いて下さりありがとうございます。そしてお疲れ様です。
日々厳しいトレーニングや難事件解決の為に動いてる中、私にサバイバル術等を教えて下さってとても感謝しています。
私自身こんな事しか出来ませんが、心の底から応援してます!
Aより。”
眩しい程に純粋で気持ちが籠った文が、小さな紙切れに詰まっていた。本来少しの事でも感情を素直に出す事は軍人として有るまじき行為だが、こればかりは仕方が無い
胸に沸き起こる感情が抑えられず、彼女に向けた表情が笑顔となってしまう
「──っ、ははは。流石Aだ。とても良いサプライズだったぞ」
『っ!!ほ、ホントですか!!喜んで頂けましたか!』
「あぁ、心に染みる文だ。これは大切に保管させて頂こう」
小官も喜ばせようと奮闘するが、彼女はその上を行ってしまう。全く……敵わないな。宝物を皺が付かない様に慎重に胸ポケットに仕舞った。これは後にラミネート加工しなければならないな
さてサプライズを楽しませて貰ったが、まだ本題に入れていない。一体どんな弁当なのか、弁当箱とスープジャーを取り出しで自身の近くに並べた
外側は普通だ。緊張の眼差しの彼女に見られながらスープジャーの蓋を開ける
湯気と共に現れたのは味噌汁。豆腐やワカメ、玉ねぎ、椎茸などスタンダードな味噌汁であった。鼻腔を擽る出汁の香りは食欲を掻き立てられる。一口飲んでみたいが、弁当を開けなければ。
未だにAの注目を浴びながら弁当の蓋をゆっくりと開ける────
「っ、これは……」
思わず声が出た。
銃兎のリクエストの卵焼き、左馬刻のリクエストの肉を使った恐らく豚の生姜焼き、オクラのおかか和え。ここまでは普通の見た目だ。しかし小官を驚かせたのは白ご飯。
その白ご飯には海苔が乗せられていたのだが、その海苔が小官達MTCのロゴマークになっていたのだ。細かいパーツは省略されているものの、中々にクオリティが高く忠実に再現されている。
あの鋏を購入する時点で、この前の左馬刻の様に海苔で動物の顔を作ると思っていたが、まさか小官達の象徴を表現するとは恐れ入った
隣を見やればドキドキと文字が見えてきそうな程に緊張して小官を見ていた大きな青い瞳と視線が交わる。きっと朝早くに起きて頑張ったのだろう
「驚いた。貴女は小官を喜ばせるプロだな」
彼女の頭に手を置き、微笑みながら慈しみを込めながら撫でた
1005話 舎弟には隠したかった若頭→←1003話 2人きりの遠足
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年9月29日 19時