1003話 2人きりの遠足 ページ23
弁当が完成すれば彼女の弁当とレジャーシートと取りに行き、2つの水筒にお茶を入れた後に例の場所へと2人で向かった。小官が作った弁当を大事そうに両手で持ちながら不安定な道を行く彼女の表情は、眩しい程に笑っておりこれからの事を楽しみにしてくれている様だ
小官もAが作った弁当がどの様な物か非常に楽しみだ
歩く事数分。所狭しと生えていた木々が無くなり、意図的に作られたであろう開けた場所──目的の場所に辿り着く。夜では人工的な光と自然の光が幻想的な景色を彩っていたが、昼は人類の叡智が詰められた迫力のある景色となっていた
カラフルな色が道路を駆け巡り、点々とした者が建物の中に吸い込まれていく。同じ場所なのにも関わらず、夜とは違った顔を見せる景色は面白い物だ
Aと共にレジャーシートを敷き、その上に座る。お世辞にも柔らかくない地面だが、そんな事はどうでもいい。隣に座り笑顔を溢れさせる彼女の方に意識がいく
「さて、昼食といこう」
『はいっ!』
余程楽しみだったのであろう、小官がそう言えば直ぐに弁当を開いてくれた
────鹿肉のステーキ、赤と黄パプリカのマリネ、プチトマト、金平ごぼう、ブロッコリーのコンソメバター炒め、白ご飯。小官にしては珍しい彩り豊かなメニューだ
弁当、というモノの正解は分からないが、開けた瞬間にAの目が輝いたので喜んでもらえた様だ。つい安堵の息が漏れる
『す、凄いです理鶯さんっ!』
「ははっ、そう言って貰えると嬉しい。何せ誰かに弁当を作るのは初めてなのでな」
『初めてでこのクオリティは流石です!…………わ、私の弁当大丈夫かな……』
最後の言葉は恐らく独り言のつもりなのだろう。不安要素は一つもないと思うが、彼女は心配症なので早く開けて正直な感想を言えば安心してくれる筈。次は小官の番だと迷彩柄のランチバックを開けた
「──っ、」
先ずチャックを開けて目に入ったのは弁当でもスープジャーでも無い。その上にちょこんと乗せられた1枚の紙切れ。それは2つ折りにされており、“理鶯さんへ”と可愛らしい文字が書かれていた
どうやら手紙の様なモノ。それを手に取れば、隣で息を呑む音が聞こえた。
………成程、だから開けて欲しく無かったのだな
Aらしく可愛らしいサプライズに頬が緩む。きっと左馬刻や銃兎にもその様なモノがある筈だ。さて何が書いてあるのかと期待に胸を膨らませながら手紙を開いた─────。
1004話 貴女は小官の上を行ってしまう→←1002話 ディスる事が全てでは無い
49人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:刹那 | 作成日時:2023年9月29日 19時