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999話 ご機嫌に揺れるブレスレット ページ19

『左馬刻さんっ!仕事……じゃなかった、シノギ頑張って下さい!!』


左馬刻の前に差し出される白いランチバック。比較的火貂組のシノギはグレーに近いモノが殆どであるが、そんな明るく言われていいモノでは無いのは確か。行動と言葉の意味、対象がアンバランス過ぎて思わず左馬刻は小さく吹いてしまう


「ハッ、ヤクザ相手にシノギ頑張れ、か……。精々裏のハマの治安維持は頑張るわ」


ランチバックを受け取り、彼女へ視線を移した左馬刻。若頭として行ってきた過去を思い浮かべながら細める赤い瞳は、何の光を灯らせているのか

ヤクザの知識を例の本でしか得れていないAはキョトンと首を傾げる。その表情は何かを期待しているのか……?と独自解釈したAは閃き、『はっ!』と声を漏らして左馬刻へタックルをかました


「ぐはっ!?」

「む?」


腹に来る衝撃で声を漏らしながらも耐えた左馬刻と突然の攻撃に驚く理鶯。そんな彼らに見られているAは、お腹に埋めていた顔をぷはっ、と上げて向日葵の様な明るい笑顔になった


『行ってらっしゃいです左馬刻さんっ!』


子供の様に元気な声、温かみを感じられる音。再び満たされる感覚がした左馬刻は、表情を柔らかくして彼女の頭を撫でる


「おう、行ってくるわ」


サラサラとした青髪を手で梳き、チラリと理鶯を一瞥。彼は少し羨ましそうにじっと自分達を見ていた。それを確認した左馬刻はニヤリと悪い笑みを浮かべ、撫でていた手をAの顎辺りに添える


「弁当、ありがとな」


逃がさないように彼女の顔に手を添える。ゆっくりと上半身を曲げれば、Aの頬に自身の唇が近付く。そして仲間へ見せつける様に態とらしくリップ音を鳴らしてキスをした


『ふぁ!?』

「クク、マヌケな声だな」


朝一はご機嫌で銃兎のあの行動で不機嫌に。感情のジェットコースターだった左馬刻の機嫌が、今日1番跳ね上がっていた


「やれやれ、小官の言う通りだったではないか」


肩を竦める理鶯は先程の自身の行動を忘れているのか、拗ねた表情で2人を見ていた。そんな彼を鼻で笑い飛ばすリーダーはAと離れ、入ってきた道へと踵を返す


「ンじゃまた夜にでも感想言いにウサちゃんと来るわ」


ヒラヒラと上げられる右手は、御守りを鈴の様に鳴らしながらご機嫌に揺れていた。顔は見えないがとても嬉しそうに笑っている事だろう

Aは彼の後ろ姿を見ながら大きく手を振り、同じ様に自身のブレスレットを鳴らした

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作者名:刹那 | 作成日時:2023年9月29日 19時

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