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991話 彼女は安眠剤 ページ11

『さ、左馬刻……さん…?』

「ん………」


がっちりホールドなのは変わらないが、反応は示さない辺り熟睡している。何度も名前を呼んでも身じろぐだけで寝息は途切れない

左へ視線を向ければフワフワな白髪。顔は肩に埋められているので相変わらず表情が窺えない。だがリラックスしたモノなのは断言出来る


自由を奪われたAはぼんやりと電気の点いていないテレビを見た。そこには薄暗くぼんやりと反射した自分達が見えた

動けない自分に無防備な彼。中々見れない左馬刻の姿に思わず小さく吹き出した


『ふふっ、眠たかったんですか?』


囁くように小さな声で聞いても返答は無い。コテンと頭を傾けて左馬刻の頭に軽く凭れても動きすら無い






最近の左馬刻は無理をし過ぎていた。そのツケがジワジワと襲っていたのだ。

体調不良を起こしても無理矢理動かして組織を潰していた左馬刻。Aと分かり合えた後も直ぐには休まず一郎の所へ行ったり、シノギをしていたり。職業柄常に気を張っている彼は睡眠すらも充分な回復行為では無かった

勿論体は休みを欲していたし、サインも送っていた。だがそれを全て無視


気にする必要が無い、といつも通りに行動していたが、遂にAと過ごすまったりとした空間が睡魔を呼び寄せた。折角のAとの時間なのに、安心してしまうからこそ抗えず、予兆も無く瞼が落ちる



────間違いなくこの時間が唯一の、ハマの王の休養である。



『寝ちゃうならここじゃなくてベットで寝転んだらいいのに……』


頭を撫でたり抱き締め返す事が出来ずにもどかしさを感じたAはポツリと呟く。

さて夜ご飯とお風呂はどうしようか。

左馬刻の幼げな寝息が響くリビングで、Aは1人ぼーっとしながら考えた。そして出た結論は────。



『よし、出来るか分かんないけど目を閉じてみよう』



座りながら寝よう、だ。

寝ずらさはあるが、意外にも左馬刻の体温のおかげが睡魔がやってきて数分が経てば夢の中。どういう状態だ、とツッコミが出そうだが、2人にとっては安心出来るモノ。寝てしまうのも必然なのかもしれない



















─────この後2人がご飯とお風呂を済ませたのは、ゆっくりと瞼を開けた左馬刻がAを起こした──およそ2時間経った頃の話である。

寝ぼけた互いを小馬鹿にしながら、仲良くベットで眠るまでそれはそれは平和で幸福な時間を過ごしていた

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作者名:刹那 | 作成日時:2023年9月29日 19時

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