939話 この3人には勿体ない ページ9
「俺らはただ、ダチとしてAと遊んでただけだ。別に礼なんて……」
彼等を相手にしていると何だかむず痒い感覚に駆られる。少しカタコトになりながら答えると、続けて声を発したのは警戒心が滲み出ている三郎だった
「態々礼を言うなんて随分と溺愛してるな。左馬刻ならまだしも、入間や毒島も来るなんて暇なの?」
「っ、さ、三郎……!!」
3人の中で人一倍警戒心が強く、気に食わない相手にはとことん冷たい三郎。慌てて一郎が止めに入るがキツく睨み続けたままだ
未成年とは言え敵対心剥き出しで睨まれているMTCの3人。間に居るAはオロオロと交互に様子を窺っている。穏やかな空気から一変、一触即発かと思われた中で、フフッと笑いを零したのは銃兎だった
「な、何が可笑しいんだよ」
「いや失礼。我々に嫉妬していると思えば可愛らしいと思いまして」
「ばッ!?何でそう解釈するんだよ!!」
「違うのか?小官達に気付く前までは穏やかだった表情が、Aが小官達の元へ来ると拗ねているような表情に変わった気がしたのだが」
「お前らの感性を疑うね!!拗ねてるんじゃなくて敵が増えた事に対して気に食わないだけだよ!!」
「ディビジョンラップバトルでは無い今、小官は敵対するつもりは無いぞ?」
「そうですね。我々はただAさんの様子を見に来ただけですから」
「あ゙〜〜〜!!!」
反抗どころか弄ばれた事で三郎は顔を真っ赤に染める。こういう所が気に食わない。怒りで顔を歪ませた三郎に、Aは焦りながら宥めに入った
『三郎さんっ!違うんですよ!理鶯さんも銃兎さんも忙しい中無理矢理でも時間を作ってくれたんですよ!!だから暇では無いと思うんですっ!!』
銃兎にとったら子犬が噛み付いて来たから遊んだまで。理鶯は聞かれたから思った事を正直に答えたまで。ただの揶揄いの一種だったのだが、純粋なAは誤解されたくないと必死に弁明した
「何でそう思えるんだよ」
『皆さん優しいですからっ、世間知らずな私が心配で来て下さったんですよっ』
怒りが収まらない三郎ではあったが笑顔のAの奥に見えた、長男がよく口にする“尊い”と言わんばかりにそれぞれの表情で胸を押えるMTCを見ると面白いくらいに怒りが消え去った
「だから何故貴女はそう思えるんですか……っ、」
「マジでお前純粋だよな……」
「ふ、ふふ、本当に愛おしいな」
性格が悪い3人に彼女は勿体ない。そう三郎は心の中で思っていた
940話 同類しかいなかった→←938話 偽物じゃないのか?
29人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:刹那 | 作成日時:2023年7月29日 8時