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938話 偽物じゃないのか? ページ8

『左馬刻さん動画撮ってたんですか!?』

「たりめーだろ。お前が必死こいてシュートしてンのは見てて面白ぇからな」

『馬鹿にしてません!?』

「馬鹿にしてねぇよ?かぁいいと思ってンだわ」

『絶対馬鹿にしてる!!』

「左馬刻、後でその動画送ってくれ」

「小官も頼む」

「おう、等価交換な」

『また隠し撮りの交換するんですか!?』


突然の来客、それがまさかの天敵勢揃い。左馬刻はまだ来ると知っていたから問題ないのだが、2人も来ていた。理鶯は元軍人なので仕事と呼べるモノは無い為に来る可能性はあった。しかし銃兎は警官であり、時間的にもまだ勤務中では無いのか……?

心の準備が出来ていなかったブクロ3兄弟は、口をあんぐりと開けて目の前の光景を眺めていた


『そうそう!銃兎さんと理鶯さんも来て下さったんですね!態々ありがとうございます!』


皆が来てくれた嬉しさで興奮が収まらないA。2人へ律儀に頭を下げつつも、ぴょんぴょん跳ねたり体全体で感情を表現している姿は、完全に親が迎えに来た時の子供の様子と同じだ

未だに彼等3人はいけ好かないが、Aを見る目は温かいモノ。何だか微笑ましく思えると段々一郎達の表情は穏やかになった


「貴女がサッカーをしていると左馬刻から聞いてな。どのように過ごしているか興味が湧いて来たのだ」

「私の方も連絡がありまして丁度仕事が早く片付いたので来たんです。良いタイミングで来れましたよ」


ニコニコと理鶯がAの頭を撫でた後続けて頭を撫でた銃兎。彼が職権乱用で仕事を無理矢理に終わらせてきた事をAは知る由もない


「なァにが早く片付いただ。私情を思いっ切り挟んで権力使っただけじゃねぇか」


唯一察している左馬刻が隣で小さく悪態をつくが、綺麗に赤い手袋に包まれた両手に耳を塞がれ聞こえる事は無かった


『……?銃兎さん?』

「どうしました?」


貼り付けた笑顔に謎の圧を感じ取ったA。背筋が少しヒヤッとしたので、深く追究する事は止めた


「よォ一郎。Aが世話になってンな」

「い、いやべ、別に……」

「いい加減俺様に慣れろダボ。こちとら普通に接しようと努力してンだよ」

「わ、悪い……」

「Aの様子を見るに、随分と楽しく遊んでくれた様だ。小官からも礼を言おう」

「私からも。ありがとうございます」


前まではあんなにいがみ合っていたのに。何度も目の前の男達が偽物なんじゃないかと、一郎は隠れて太腿を服の上から抓っていた

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作者名:刹那 | 作成日時:2023年7月29日 8時

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