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980話 欲張りな彼女 ページ50

『理鶯さんっ、私決めました!』

「了解した。では店員を呼ぶとしよう」


理鶯が感情を押し込め彼女を眺めていれば、漸く食べたい料理を決められたようでAは目をキラキラさせながら報告。テーブルの端に置いてあった呼び出しボタンをカチッと押した

程なくして店内にピンポーンと音が鳴り、店員がハンディ端末を持ってやって来る


「ご、ご注文どうぞ…っ」


やはり大柄で迫力のある軍人がいれば必然的に固くなる店員。マニュアル通りな言葉を発するが、緊張が篭もり瞬きも多い。そんな様子に理鶯は興味すら持たなかったが、Aはハッとして背筋をピンッと伸ばした


『んんっ、えっと私は……この鴨のコンフィプレートと苺のムースをお願いします』


食べて欲しいデザートがあると言ったはずだが、Aは辿々しく2品注文した


説明が遅れたが、この店は“ファミリー層でも通いやすく”をコンセプトにしている。なのでコースというモノは無く、全てが単品やセット。Aが頼んだコンフィプレートも、鴨のコンフィだけでなく、ミニサラダやフランスパン5枚、セットとして海老のビスクが付いた1品でも満足出来るメニューだ

それなのにも関わらずデザートのムースまで頼んだA。思わず理鶯は静かに眉を顰める

しかし今は注文の時間だ。聞くのは後にして続けて理鶯が口を開かせた


「では小官はラムチョップのブルーチーズソースがけ、パンはパン・コンプレで頼む。それと単品でポトフ、食後にモンブランをお願いしたい」


理鶯は種類が選べるパンがセットになった料理を選んだ。バゲットやエピがある中で栄養素が高いとされるパン・コンプレをスマートに注文していく姿にAは感激の光を目に宿した


「畏まりました。ドリンクの方は如何致しますか…?」

「食後にコーヒーを頼もう。貴女はどうする?」

『はっ!わ、私もコーヒーでお願いします』

「畏まりました。では失礼します」


未だに緊張気味な店員が一礼すると、静かに厨房に戻って行った。それを確認した理鶯は鋭い視線でAを見やる


「食べてもらいたいデザートがあるが、何故ムースを?食べられるのであれば問題ないのだが……」


理鶯がAに食べてもらいたかったデザートというのはモンブランである。モンブラン自体ボリュームがある訳では無いが、プレートを頼んでいる時点で食べ切れるかが不明だ

そんな問いにAは照れくさそうに視線を逸らし、モジモジ手を弄りながら口を開かせた───

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作者名:刹那 | 作成日時:2023年7月29日 8時

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