976話 毒に溺れる軍人。 ページ46
「っ!?」
あの鉄壁なポーカーフェイスを打ち砕くA。理鶯の右手にはビニール袋の取っ手部分だけでなく、Aの手が添えられていたのだ
『理鶯さんが離さないのなら、少し強引ですが私も一緒に持ちます……!!』
周りからすれば、重たい荷物を2人で仲良く持ち運ぶ微笑ましい画だ。そしてもしこの場に警官とヤクザが居たなら“いや何でそうなンだよ”“どういう状況ですか……”とツッコミが出た事だろう。残念だがここにツッコミは居ないが
そんな事より予想外の行動に理鶯は────
「ふ、ふふっ、そうか。そういう手段を取るなら小官は意地でも離さない。これで小官とAは仲良しさんだな」
───幸せの頂点にいるのであった
そればかりか袋が邪魔だと、得意げな表情をするAを他所にどう退けようか思案していた。成る可くAの手がビニール袋に行かないようにして、ぎゅっと握りしめる
『理鶯さん!私は理鶯さんの手を握ってるんじゃなくて袋を持ってるんですっ!持たせてくれないから…っ!!』
「小官は貴女の手を握っていると認識している。貴女から握ってもらえるとは小官は幸せだな」
『〜〜ッ!!!!』
そのつもりでは無いが目の前の幸せそうに微笑む彼を見れば、自然と顔が赤くなって照れだしたA。声にならない音を閉じた口から漏らし、両手で顔を隠そうとする
しかししっかりと握られている左手はビクとも動かなかった
「ククッ、照れているとは可愛らしいな」
『そそそんなつもりじゃなくてですね……!!』
「さて行こうか。早くしなければ日が暮れてしまう」
素なのか態となのか。完全に自分のペースへと飲み込んだ理鶯は、未だにテンパっているAを引っ張って次の目的地へ足を進ませた
細い手からも伝わる程に主張する脈拍は、幾度の戦場を乗り越えてきた逞しい手を擽ってくる。恥ずかしがる割には握られたままの手は温かくてとても柔らかい。冷たく硬い銃火器の方が殺傷能力は高い筈なのに、彼にとっては毒のようなモノ
庇護欲、独占欲。ドロドロとした欲がフツフツと己の身の中から溢れ出す感覚。それは彼女と出会ってから現れるようになった。彼女の前では所詮男、欲には抗えないのだと、理鶯はAに見えないように嘲笑した
『ちょっと理鶯さん〜!!話を聞いてくださいよ〜』
「どうかしたか?あぁ、そろそろ昼ご飯の時間だな。ランチでもしようか」
『絶対態とだッ!!!』
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年7月29日 8時