検索窓
今日:50 hit、昨日:4 hit、合計:11,048 hit

976話 毒に溺れる軍人。 ページ46

「っ!?」


あの鉄壁なポーカーフェイスを打ち砕くA。理鶯の右手にはビニール袋の取っ手部分だけでなく、Aの手が添えられていたのだ


『理鶯さんが離さないのなら、少し強引ですが私も一緒に持ちます……!!』


周りからすれば、重たい荷物を2人で仲良く持ち運ぶ微笑ましい画だ。そしてもしこの場に警官とヤクザが居たなら“いや何でそうなンだよ”“どういう状況ですか……”とツッコミが出た事だろう。残念だがここにツッコミは居ないが



そんな事より予想外の行動に理鶯は────



「ふ、ふふっ、そうか。そういう手段を取るなら小官は意地でも離さない。これで小官とAは仲良しさんだな」



───幸せの頂点にいるのであった


そればかりか袋が邪魔だと、得意げな表情をするAを他所にどう退けようか思案していた。成る可くAの手がビニール袋に行かないようにして、ぎゅっと握りしめる


『理鶯さん!私は理鶯さんの手を握ってるんじゃなくて袋を持ってるんですっ!持たせてくれないから…っ!!』

「小官は貴女の手を握っていると認識している。貴女から握ってもらえるとは小官は幸せだな」

『〜〜ッ!!!!』


そのつもりでは無いが目の前の幸せそうに微笑む彼を見れば、自然と顔が赤くなって照れだしたA。声にならない音を閉じた口から漏らし、両手で顔を隠そうとする


しかししっかりと握られている左手はビクとも動かなかった


「ククッ、照れているとは可愛らしいな」

『そそそんなつもりじゃなくてですね……!!』

「さて行こうか。早くしなければ日が暮れてしまう」


素なのか態となのか。完全に自分のペースへと飲み込んだ理鶯は、未だにテンパっているAを引っ張って次の目的地へ足を進ませた

細い手からも伝わる程に主張する脈拍は、幾度の戦場を乗り越えてきた逞しい手を擽ってくる。恥ずかしがる割には握られたままの手は温かくてとても柔らかい。冷たく硬い銃火器の方が殺傷能力は高い筈なのに、彼にとっては毒のようなモノ

庇護欲、独占欲。ドロドロとした欲がフツフツと己の身の中から溢れ出す感覚。それは彼女と出会ってから現れるようになった。彼女の前では所詮男、欲には抗えないのだと、理鶯はAに見えないように嘲笑した


『ちょっと理鶯さん〜!!話を聞いてくださいよ〜』

「どうかしたか?あぁ、そろそろ昼ご飯の時間だな。ランチでもしようか」

『絶対態とだッ!!!』

977話 食べているところを見てみたい→←975話 変なところで頑固な2人の攻防。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (17 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
29人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:刹那 | 作成日時:2023年7月29日 8時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。