975話 変なところで頑固な2人の攻防。 ページ45
『よし、ここで買える必要な物は買い揃えたし次は残りの食材を買いに行きましょうか!』
「次の目的地は何処だ?」
『えっとですね……。ここから西に1km歩くみたいです』
「了解した」
『………。……あの理鶯さん、私荷物持ちますよ?』
「大丈夫だ。これぐらい持てなければ戦場で生き残れない。寧ろもっと買っても良かったのだぞ?」
『いやその……私一個も荷物持ってないのは申し訳ないといいますか……。せめて軽くても良いので何か持たせてください……!』
空調が効いた快適な室内から、太陽が照りつける外へと出てきた2人。Aは行きましょうかと言った後、理鶯の姿を見て表情を曇らせた。2件目ではあるが、様々な種類の物を買ったので理鶯の両手から大きく膨らんだビニール袋が4つがぶら下がっている
猛暑日という訳では無いが長距離を歩き続けたAにとって、ずっと理鶯に買った物を持ってもらっている事が申し訳ない
何故そんな事を言う?と言いたげにキョトン顔で首を傾げる理鶯に、Aは汗を飛ばす勢いで説得に走った
『これは私の買い物なので何か持たないと……!!これじゃあ理鶯さんを荷物持ち係として使ってる感じがして落ち着かないんです!!』
Aは真剣だ。しかし理鶯は────
(ふむ……何故そんなに必死に言うのだろうか……。ふふっ、優しいのだなAは。それにしても必死な顔も可愛らしい)
───全く言葉は届いていなかったのだった。
ニコニコ微笑みを浮かべている理鶯。流石のAも、その表情から彼は全然聞いてないと気付いている。なので強硬手段。4つの内の1つを無理矢理奪おうと両手を伸ばした
『鍛えてますからっ!!持たせて下さい!!』
「小官が持ちたいのだ。なので気にしないでくれ」
勢いよく伸ばした両手に反応した理鶯は、咄嗟に左手を上げて避けた。スカッ、とAの両手が虚しく空を切る。変な所で頑固な2人の攻防は続く
『何でですかっ!!』
「それは此方のセリフだ。何故罪悪感を抱くのだ?小官はただ持ちたいから持っている。それで良いでは無いのか?」
『ぐぬぬ……』
この場に左馬刻か銃兎がいれば、“お前ら何の為の喧嘩してんだよ……”と呆れている事だろう。現に通り過ぎる通行人達も“喧嘩……なのか?”と微妙な顔である
されっぱなしが苦手なA、ここでとある策を思い付いた
目の前の男に鍛えられた足で地面を蹴り、上げられていなかったもう片方──右手の袋へ手を伸ばした
976話 毒に溺れる軍人。→←974話 非日常だったが、日常になり得た
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年7月29日 8時