【ヒプマイ】オートマタ・イストリア -19章- 交われた赤と青 (ページ5)

今日:49 hit、昨日:4 hit、合計:11,047 hit

935話やべぇ……尊いページ5

何とか落ち着こうと三郎は火照る顔を冷ましながら話を進めた

｢僕も一兄もしたんだから次はAさんだよ。段々良くなってるんだからさっさとしろっ！｣

｢ははっ、一旦休憩して心も落ち着いたんだから冷静にすれば行けるかもしれないぞ？｣

『そ、そうですね！何となく皆さんの視線とか足の動きとかも参考になりそうですし、いけそうな気がします！！』

2人の言葉にハッとしたAは強く頷くと、ゴールの前に駆け足で向かいパンパンッと自分の両頬を叩き気合を入れた。やる気ある姿に二郎もボールを持ってパスを出す場所まで走っていく

疲れ知らずなのか、それとも楽しさで疲労感覚がおかしくなったのか。元気に離れていく2人に三郎は引き攣りの笑顔を、一郎は嬉しさで満面の笑みを浮かべる

｢あの2人の体力は無尽蔵か……？｣

｢二郎は普段運動してるし、Aはあの毒島サンに鍛えてもらってるらしいからなぁ…。元気なのは良い事だ｣

彼等の目の前で再開されるシュート練習。確かにさっきよりは惜しくはなったが、まだまだ入る様子は無い。悔しがるAに諦めるな！と励ます二郎

2人には大粒の汗が流れ、オレンジ色に染まった陽に照らされキラキラと輝いている。まさに青春の1ページのような光景だ

────勿論この男に刺さらない訳が無い

｢やべぇ、尊い……！！｣

青春をテーマにするラノベも愛読している一郎にとって、2次元のイベントが目の前で起こっている。しかも愛しい弟と妹のような庇護欲を掻き立てられる女性だから、より一層語彙力を失う程に歓喜していた

尊敬すべき兄だからこそ、隣の三男は｢一兄……｣と言いたい事を殆ど飲み込んで名前だけを呼んだ

────Aが5回ボールを蹴った頃、漸くボールがクロスバーに当たった

ゴールはしていないが、今までよりも1番惜しい。あと少し下だったら入っていた。だが希望が見えたのは確か

『おぉー！！？漸くゴールにボールが飛んでいきました！！』

｢くぅー！！惜しかったなA！！今の感覚を忘れないうちに次行くぞ！！｣

『はい先生！！』

無邪気に喜び悔しがる2人。二郎が急いでボールを取りに行く間、Aは次で決めるぞと言わんばかりに深呼吸して集中。全ての感情が抜け落ちたかのように無表情になったAの目にはゴールしか映っていない

二郎が元の立ち位置に戻った頃には、戦場に立つ兵士のような冷たくも静かに闘志を燃やす顔となっていた