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969話 キッチンで料理をする練習ですっ! ページ39

「ん……」


不意に温もりが失ったのを感じた銃兎はゆっくり瞼を上げる。寝る前には居た筈のAが居ない

その瞬間に全身が冷える様な恐怖が襲い反射的に上体を起こしたが、遠くからトントントン、と何かをしている音が聞こえたので直ぐに収まった。いつもは自分が早いか一緒に起きるのに、とぼんやり考えながらベットから降りた銃兎。欠伸をしながら眼鏡を掛け、彼女がいるであろう音の出処へ足を進ませた









『あっ、おはようございます銃兎さん!勝手にですがキッチン借りてます!』

「おはようございますAさん。朝ご飯を作ってくれたんですか?」


香ばしく焼けた匂いや目を覚まさせる珈琲の香り。異なる匂いだが、不快に交わらずより食欲をそそる。
そんな香りが充満したキッチンにはパジャマ姿のAがテキパキと料理をしていて、丁度スクランブルエッグを作っている最中だった。銃兎の存在に気付くと直ぐに振り返り、太陽に負けない明るい笑顔で挨拶。釣られて銃兎も微笑んだ


『はい!買ってきた材料がまだ余ってましたし、練習も兼ねて!あっ、キッチンで料理をする事の練習なので今作ってる料理を弁当にする訳じゃないですよ!』


視線を彼女から天板に移せばパックに入った数個の卵、アスパラガス、ベーコン等々Aが買ってきた材料達が広がっていた。確かに彼女は理鶯の手伝いをしているが、基本的に野営地での手伝い。料理も普通とは勝手が違ってしまう

スクランブルエッグを皿に盛り付けているAを見ながら銃兎は笑みを深めた


「ふふっ、そうですか。それでどうです?上手く出来ました?」

『ちょっと動きが悪かったですが問題なしです!後はどう弁当に詰めるかですっ!弁当は見た目を拘ればより良い弁当になりますし、そこをもっと考えないと!』


彼女が作ってくれたという事実で嬉しいんだが……。やる気があるならやらせてあげよう。
───銃兎は無理するな、と言う言葉を飲み込み「楽しみです」とだけ言い、身嗜みを整える為一旦その場を離れた









細身のスーツに髪型は七三。レンズには指紋どころか埃すら付いていないアンダーリムの眼鏡。いつも以上に完璧に決めた銃兎がリビングに入ると、料理を終えたAがテーブルに朝食を並べていた


こんがり焼けたトーストとアスパラベーコン、トロトロ半熟なスクランブルエッグ、透き通った琥珀の具沢山コンソメスープ。まるでホテルの朝食のような献立に銃兎は目を丸くしたのであった

970話 煩悩まみれの警官。→←968話 この時だけはクソッタレな世の中を忘れられる



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作者名:刹那 | 作成日時:2023年7月29日 8時

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