【ヒプマイ】オートマタ・イストリア -19章- 交われた赤と青 (ページ35)

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965話ギリギリな警官。ページ35

銃兎はリビングでソファに身を預けテレビを見ていた。別に興味をそそられないバラエティ番組だ。表情が抜け落ちた顔からしてこれはただの時間を潰す為の行為。しかし時が経つと遠くからドライヤーの音が聞こえ、彼の意識はテレビからお風呂場がある廊下に向けられていった

ガチャ、バタン

数分後、今度は扉が開閉される音が聞こえた。その瞬間に銃兎はスマホを持ってカメラアプリを起動、レンズを廊下へと向ける。その時間僅か2秒
この時を待っていたと言わんばかりに銃兎の口角はジワジワと上がり、死んでいた目も光が宿った

ピコン、と録画を開始する音がテレビの声に紛れて鳴る。この男、欲深い

さてどう来るか。恥ずかしがりながら顔を覗かせるのか、服を褒めながら堂々とやってくるか。彼の頭の中はそんな事でいっぱいだ

スタスタと足音が近付いてくる。もう直ぐだ……とカメラの画角を確認した銃兎の目は鋭く、眼鏡レンズと共に光る

『銃兎さん見て下さい！黒い兎さんでラビ君か銃兎さんみたいじゃないですか！？』

｢ゥグッ、｣

ひょこっと顔だけ覗かせて笑ったAは、黒色のフードを被っていた。前回と同じようにそのフード部分には動物の耳があり、今回は兎の長い耳が着いていた。ワイヤーもない綿が詰まったその耳は重力の言われるがままに垂れている──所謂垂れ耳黒兎の姿

無邪気な笑顔と相まって大変可愛らしい動物が現れ、銃兎は胸を押さえて殴られたような声を上げた。スマホの録画画面がかなりブレたが、それは如何に彼の好みを貫いたのかを物語っている

『あれ？銃兎さん、どうしたんです？も、もしかして銃兎さんみたいって言われたのが嫌でした！？』

変な声を最後に感想が返って来ない銃兎に、Aはしまったと顔を青くする。そして顔だけ覗かせていたのを止めて慌ててリビングに入ってきた

漸く見せた全貌。前回の着ぐるみのようなモコモコ感はあまり無く黒色だからか、乱数にしては落ち着いた印象。しかし上着の裾には赤色のレース、ズボンには赤色の紐が見えており、彼が一体誰をイメージして作ったか一目瞭然

感想を言ってあげたいが、銃兎は今絶賛悶絶中。慌てるAもだが、それに合わせて揺れる耳が余計に可愛らしい。現在進行形で銃兎のツボを攻撃されている

それでも何とか力を振り絞り、途切れ途切れだが彼女へ本心を伝えた

｢ふ、そ、そんな事はありません……ッと、ても良く似合ってます、よ……｣

悪徳警官、理性がギリギリである