962話 まさかの来週!!? ページ32
この後彼等は弁当をいつ何処で作るか、どう渡すかで話が進んでいた。結果だけ言うと明日材料を買いに行き、調理器具が豊富にある左馬刻の家で次の朝に作り、左馬刻の運転でAを銃兎と理鶯の所へ送るという話になった
銃兎が、上手く自分の家にAを泊まらせるようにしたな……と左馬刻に対して感心していたのは内緒である
因みにその日左馬刻は勿論シノギがあるので、理鶯の所へAを送ればそのまま事務所に向かう。弁当は舎弟に隠れて食べる予定だ
そんなこんなで話が決まれば時間は10時を過ぎていた。そろそろ左馬刻と理鶯は帰らなければならない。言葉に出さずとも、顔を顰めて名残惜しさ全開にして彼等は帰って行った
「どれだけ離れたくねぇんだよ……」と彼等が閉めた玄関の扉を見つめて銃兎は溜息を吐いたのは、隣で一緒に見送ったA以外きっと聞こえていない
『行ってしまいましたね』
「えぇ、漸く平和になりましたよ」
あのイカれた仲間達と居ると暇はしないが、とことん疲れる。たまには2人きりでAと過ごしたかった銃兎は、微笑みの下で歓喜のガッツポーズを小さくしていた
「さてリビングに戻りましょうか」と彼女に促せば、笑顔で返事をしてテトテト可愛らしい音を立てて1人先にリビングへ向かっていった。何気ないその後ろ姿も、銃兎にとっては殺伐とした日常から抜け出しているように思えてとてもリラックス出来る材料だ
『銃兎さん!今テレビでラップバトルの事が流れてましたけど、予選来週じゃないですか!!』
リビングから彼女の驚き声が聞こえる。銃兎からすれば既に知っている情報だが、限られた情報網しか無く更に色々なハプニングでそれどころでは無かったAからすると、来週という近すぎる開催日に酷い罪悪感と焦りを感じるモノだったからだ
「えぇそうですよ」とリビングに戻れば、Aはソファに座りながら顔を銃兎に向け涙目になっていた
『〜〜!!』
何か言いたげだが、我慢して言葉では表せない声を上げている。その理由は風邪をひいた時に理鶯に言われた言葉が原因なのだが、勿論銃兎が知っている訳が無い。きっと申し訳ない気持ちでいっぱいなんだな、と銃兎は直ぐに彼女の隣に座るとギュッと優しく抱き締めた
「大丈夫ですよ。我々はそこら辺のチームに負ける程弱くはありませんから。それに何かあっても貴女を理由にするなんて絶対にしません。だからAさん、安心して応援してくれませんか?」
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年7月29日 8時