934話 そっちの危機感じゃないんだよな…… ページ4
相変わらず可愛くない反応だが感情の裏返しなのは明白。喋れば喋る程兄2人をニヤニヤとさせるだ
頭では分かってても思春期男子は直ぐに行動に移せる訳では無い。立ち上がり、ズボンに着いた土埃を払った三郎の口は勢いよく動くのだった
「ニヤニヤするな!お前に馬鹿にされるのだけは我慢ならないんだよ!」
くわっ、と噛み付く三郎。そんな彼に恐れず大胆に抱き着いたのはAだ
『三郎さんっ!嫌々した割には私よりも早くゴールするなんて〜!!』
「うわっ!?く、くっつくな!!」
同じく絶賛興奮中であり甘えん坊なAの耳には、嫌がる言葉は聞こえないらしく遠慮なしに抱きしめる
近くなる彼女の距離。強く感じる異性の感触。鼻を擽る太陽のような温かい匂い。それらは三郎にとって毒と同じ。と言っても体や精神に害がある訳では無い。いや、ある意味で言えば精神面には害かもしれない
「Aさんっ!お前何に抱きついてるのか分かってるのか!?」
『三郎さんです!』
「そういう事じゃ無いんだよ馬鹿!!!」
心臓が煩い。思考が乱れる。だからといって嫌では無い。三郎の心は矛盾してぐちゃぐちゃだ。あまりの可愛い狼狽えっぷりに兄2人は口元を押さえて悶絶していた
「兄ちゃん……っ!!」
「弟と妹のやり取り尊い……!!」
「その発言は危ない気がするけど分かるよ兄ちゃん……ッ!!」
この2人の中でツッコミは存在しない。そしてその会話が聞こえた人物もいない。ただ遠くで電話をしようか我慢しようか、吸っていた煙草を怒り震える手でへし折りながら見ているヤクザがいるだけだ
「お前無闇に異性に抱き着くなって言われて無いのか!?」
嬉し恥ずかしさでもがいてAから離れようとする三郎はそう口にした。何処か聞き覚えのある言葉。即座にAは顔を青くして彼から距離を取った
『あわわ!?理鶯さんに言われてました!!!』
「言われてるなら気をつけろよ!」
規律を守る軍人がちゃんと指導していた事に、三郎は安堵と感謝をしながら怒る。心臓はまだ煩い。顔も赤い
それに反してAは冷や汗を飛ばしながら周りにいた3人に訴えた
『今のは見なかったことに!バレたら怒られてしまいます!!』
「そんな怒らねぇと思うが……まぁ分かった」
怒られる事に危機感を覚えるのではなく、異性との過剰接触により何が起こるのかと危機感を覚えて欲しい一郎。左馬刻達が過保護になるのは仕方ないのかもしれない、そう苦笑いを浮かべた
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年7月29日 8時