957話 MTCキラーだぞ ページ27
『急って……私の事を考えて言って下さったんですから礼を言うのは当たり前ですよ?』
悪意なく言えてしまう辺りAはまだまだ純粋な子供のようである。彼女はそうなのだと理解し、冷静になれない三郎と二郎も年齢含めて子供なのだが
「す、素直過ぎて言い返せねぇ!!」
「ほほホントそう言うとこは良いとは思うけど心臓に悪いんだよ!ってか二郎!何でお前まで狼狽えてんだ!!」
「しゃーねぇだろ!お前だって顔赤いし人の事言えねぇだろ!!」
「僕は仕方無いだろ!あんまり慣れてないんだから!」
「俺だって慣れてねぇし!!」
感情の行き先を無くした2人の逃亡手段は喧嘩。消化出来ない感情を互いにぶつけ始めた
一郎達にとったら必然、Aにとったら急に始まった喧嘩は、2人の顔の赤みが引くまで続けられたのであった
途中で長男が「やべぇ……語彙力どっか行くぐらい可愛い……」と言いながら録画していたのは弟達に内緒。
・
─────さて、そんなこんなで彼等と遊び続ければオレンジだった太陽は明日に備えて隠れようとする。まだ街灯が点くには早いが、沈み始めれば一気に暗くなってしまう
名残惜しいが、左馬刻達はヨコハマディビジョンへ帰る事にした
その前に銃兎は理鶯を乗せて、左馬刻はAと一郎達を乗せて萬屋ヤマダまで向かう。最初は自分達の足で帰ると主張したが、左馬刻にそんなのは通用しない。無理矢理に送る案を押し通したのだった
怨敵だった人の車の中は酷く落ち着かないが、ずっとAが助手席で今日の思い出を語りながらはしゃいでいたので、少しマシだった
というのも、彼女が喋れば左馬刻は穏やかな表情だし────
『二郎さんのシュート凄かったですよね!左馬刻さん!こう……バッ、と地面を蹴ってバンッ!て鳴った頃にはシュッ!とゴールしてますから』
「おい語彙力無さすぎだろうが。もう少し何とかしろや」
────という漫才を目の前でしてるのだから、ピリついた空気になる暇がない。
「お前ラップバトル出来るように勉強してんだろ?そんなんじゃ咄嗟に言葉出ねぇだろ」
『そ、それは!そう……ですけど……凄かったんですもん……』
「っ、ンな顔するなよ……。少しずつでも良いから出るように練習しとけ」
『はい!』
「……火貂組の若頭もAさんの前では迫力奪われてますね」
「結構な弱点だね、兄ちゃん」
「左馬刻どころかMTCキラーだぞA」
「テメェら聞こえてンだわ……ッ!!」
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年7月29日 8時