955話 考えて何になるの？ ページ25
言い方が厳しい三郎だが、その分彼女の為を思っての事だ。優しく言ったところで、でもでもと言い返される。それならば圧迫するくらいが丁度いい。そう考えていたのだ
彼の思惑通りに反論の言葉が見つからないAは『あ……うぅ……』と母音しか出せない状態。本来なら直ぐに左馬刻達が割り込んでくるのだが、こればかりは三郎と同じ意見だった。上手くAの内罰的な性格を治せるかもしれない、とパス回しを再び中断し一郎と共に静かに見守っていた
鋭い光を宿した三郎の目、まだ光に丸みはあるがじっと見つめて動かない二郎の目。そのカラフルな双眸達に捉えられるAは、じっくりと考えた。そして、確かにそうかもしれない……と険しい表情になった
その心境の変化を読み取った三郎は続けて説得に入る
｢まぁ……気持ちは分かるよ。あの時こうすれば、逆にこうしなければ。そんな事は皆にある。僕にもあるし、一兄にも、馬鹿だけど二郎にだってある｣
｢おぉい！今の流れで馬鹿要らねぇだろ！！｣
唐突なディスに二郎は思わず反応してしまったが、三郎はチラリと一瞥するだけで気にせずAの方を見た。真っ直ぐと
｢───でもね、それ考えて何になるの？｣
剣の様に鋭利で、槍の様に深く、矢の様に的確に狙った
｢そもそも左馬刻と一緒に居るのに僕達と出会って遊んでる時点で詰みなの。どう上手く立ち回ってもいつかはバレる。そんな詰み状態だったのに今の状況に出来たのが驚きだよ｣
『っ……そう、ですかね……』
｢僕が思いつく限りのケースの中では1番良い状況だと思う。一兄と左馬刻がPK対決するくらいだからね。それなのに自分の所為自分の所為って言うの？｣
じっと見つめられる瞳から逃げられないAは未だに返す言葉が見つからない。でも彼の言う通りだと徐々に感じていた
あとひと押しだ。そう三郎は口角を上げる
｢ま、どうしても自分の所為って言いたいなら────“自分が黙ってた所為で結果的に一郎さんと左馬刻さんを一緒にサッカーさせてしまいました。”って言いなよ｣
『っ！！』
｢結局は見方なんだよ。というか、この前のボードゲームで学ばなかった？一見ハズレの効果でも、考え方次第では一発逆転の当たりの効果になり得るって｣
『っそ、そうですね……！！三郎さんの言う通りです…！！』
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作者名：刹那 | 作成日時：2023年7月29日 8時
