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933話 頭だけじゃない!! ページ3

兄に怒られた2人は渋々という形で再開する事に

二郎はボールを持ち、未だに苦虫を噛み潰したような顔の三郎へ声を掛けた


「行くぞー三郎ー」

「蹴り易い位置に寄越せよ二郎ッ」

「分かってるって。お前なら出来るっ、ぞ!!」


憎まれ口を叩かれ何度も喧嘩をする弟であるが、こういう時はしっかり兄として信頼し応援する次男。ボールを彼の要望通りに蹴り易い位置に送り出した

一郎とAが固唾を飲んで見守る中、三郎は表情を険しくしてボールを目で追う。絶対失敗するものか、兄に失望されるような事はしない。プレッシャーを感じていた三郎は冷や汗を流しながらを足を上げ、ゴールに届けと願いを込めて思いっきり振った


「行っけぇええええッッ!!!」


ボールは三郎の脛に当たり、空高く跳ね上がる。その瞬間三郎は終わったと感じた


しかし


ボールは物凄く回転していた

空に浮いていたボールは地面に着くなり摩擦で弾け、三郎の方へと再び向かっていく


「うわぁっ!!?」


ご主人が帰ってきた犬のように勢いよく帰ってくるボールに三郎は反射的に声を上げながら足を振った。すると奇跡的に足の甲の中心がボールの中心と合い、先程とは段違いに勢いよく、そして真っ直ぐにゴールへ飛んで行った


反動で三郎はバランスを崩して尻餅をつき痛みで表情を歪めるが、それは一瞬の事で直ぐにボールの方へと視線を向けた。あまりにも予想外の展開に見守っていた3人はリアクションを忘れ固まる


誰も声を上げない為ザザッ、とゴールネットがボールを受け止める音が鮮明に彼らの耳に届く


それで漸くシュートが決まったのだと実感が湧いたのであった


「嘘……は…入っ、た…?」


ポツリと零された三郎の声。それに続くかのように一郎、二郎、Aも歓声を上げる


「スゲェじゃねぇか三郎!!」

「まぐれでもトリックプレー決めちまうなんてやるな!!」

『あれからちゃんと決めるなんて驚きました!!』


自身に駆け寄り各々興奮に語られ戸惑う三郎。困惑の表情ではあるが、安堵と喜びが滲み出てきて顔がじわじわと赤く染めていった


「ぼ、僕は頭だけじゃな、無いからな!!」


照れ隠しで二郎に噛み付くが、サッカー少年は絶賛興奮中。気にするどころか、笑顔で彼の顔をより真っ赤にする言葉で返すのだった


「そうだな!反射神経もあるみたいだし、やっぱサッカー練習したら良い選手になりそうだな!」

「うるさい!二郎のくせに僕を褒めるなんて身の程を知れぇ!」

934話 そっちの危機感じゃないんだよな……→←932話 似たリアクションの3人



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作者名:刹那 | 作成日時:2023年7月29日 8時

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