950話 似るのは必然かもね ページ20
理鶯と三郎が彼らに合流した頃には、左馬刻と一郎の2人は手を膝について激しく呼吸をしていた。何方も大粒の汗を流し、体が欲する酸素を必死に取り込んでいる
「はぁっはぁっ、おま、いい加減、負けろやッ!!」
「はぁっ、そ、れはっ、こっちのセリフ、はぁっはぁっ、」
いつまで経っても決着がつかない2人。Aと二郎は目を輝かせて応援しているが、銃兎はそろそろ飽きてきたらしい。肩を竦めて困った笑みを浮かべていた
「やれやれ、似た者同士ですね。そう思いませんか、お2人は」
理鶯と三郎が来た事に気付いた彼はそう話を振る。理鶯は「そうだな」と微笑みながら同調。続けて「山田三郎はどうだ?」と尋ねれば、三郎は目を細めて息切れの2人を見た
「一兄は昔から左馬刻と関わりはあった。その時の僕の記憶はあまり無いけど、ネット情報からすると凄く近しい関係だったし、似るのも必然かもね……」
僅かに口角が上がっていた。家族を護る為に自分を蔑ろにして戦う長男でも無く、憎しみで暴れる狂犬でも無く、楽しそうな少年の一郎を見て喜んでいるように見える
幸い、と言うべきか、声は銃兎と理鶯にしか届いていない。だからこそ2人は笑みを深くし、柄にもなく楽しそうなリーダーを見た
ここで遅れて二郎とAが三郎達に気付く。彼女達は嬉しそうに名前を呼べば、一郎達もお互いしか映ってなかった視界に彼等を入れた
「どうしたんだよ三郎、サッカーやりたくなって来たのか?」
「別に。ただ来たかっただけ」
『分かりますよ三郎さんっ!近い方があの戦い迫力ありますからね!』
「……撮った動画、僕に送ってよね」
『勿論です!』
楽しそうな弟達を見て呼吸を整える一郎。すると彼は体を起こし左馬刻へある提案を持ち掛けた
「なぁ左馬刻。この勝負、一旦は引き分けにしねぇか?」
中途半端な結果を嫌う左馬刻は「あぁ゙!?」と凄む。しかし直ぐにA達を見ると、彼の心情を察したのか目を細めて舌打ちをした
「………わぁーったよ。俺らだけやっちまってたら意味ねぇしな」
一郎は蹴ろうとしていたボールを持つと、ワシャワシャと乱雑に自身の頭を搔く左馬刻と共に弟達の元へ歩み寄った。近づく2人を、てっきり勝負は最後までやるモノだと思っていた彼等は疑問符を浮かべ見ていた
『あれ?もう終わりですか?』
「まぁな。このままじゃいつまで経っても終わらねぇし、折角三郎まで来たのに俺らだけサッカーしててもな」
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年7月29日 8時