949話 無邪気に笑っている ページ19
『見て下さいこのお2人！めっちゃカッコよくないですか！？』
｢うぉ！マジじゃん！！ちょっと送ってくれよ！｣
『了解です！』
｢やれやれ、いつまで続くんですかねあの2人｣
｢お前いい加減負けろやダボッ！！！｣
｢負けるかよ！！お前の方こそ負けろ！！｣
｢ンだとッ！！！？｣
平和だ。目の前の光景は平和以外の何物でもない。理鶯はその光景を焼き付けるかのように瞼を閉じる
｢何故貴殿はそう思ったのだ？｣
問い詰める様な言い方ではなく、あくまで純粋な疑問を含ませた声色。だからこそ三郎は素直に答えられた
｢……何となくだよ。性格が変わった、にしては違和感があって……｣
｢そうか……｣
理鶯は一言で済ませた。これ以上話してしまってはいけない気がして。代わりに自身の思いを吐露した
｢これは小官だけが知っていればいい。彼女は本心で笑っている。否定はしたくない｣
｢……でも調べてるんでしょ？ハッキングなら手伝えるけど｣
｢必要ない。先程も言った通りこれは小官だけで留めたいのだ｣
｢そう……｣
｢だから貴殿も誰にも言わないでくれ。例え隠した事で状況が悪化したとしても、全て小官の責任だ｣
重々しく響く低音。覚悟の強さとあの笑顔を護りたいという思いが伝わる音だった。
気に食わない相手だった。しかしそんな事を聞いてしまえば、そんな感情は捨てるべきだと三郎は徐に立ち上がる
｢アンタの気持ちは分かる。でも、悪化した時くらい僕を頼れよ。そこら辺の奴らよりも有能だよ｣
振り返り理鶯を見下ろす少年の目。自身よりも背は低く歳も幼いのに大きい瞳は頼もしく、思わず理鶯は小さく息を吹いた
｢出来る事ならそうなる事を防ぎたいが、もしなってしまったのなら遠慮無く頼るとしよう｣
優しく微笑む理鶯。少し悲しさが滲むモノではあるが、三郎も彼の心情を察しながら微笑みを返す
｢じゃあ約束ね。軍人はそういうの守るんでしょ？｣
｢ふっ……そうだな。感謝するぞ、山田三郎｣
2人はAを見た
無邪気に笑っている。幸せそうに。
スマホを持ち、罵声を吐きつつ燃え上がる2人を撮りながら隣の友達と笑っている。そしてそれを温かい目で見守る保護者の様な警官
どれも理鶯と三郎にとって護りたい光景だ。だからこそ、笑みを浮かべて約束を交わす事が出来た
｢あーあ、何だか僕も混ざりたくなってきたなぁ。毒島はどう？｣
｢小官も同じだ。では行くとしよう、山田三郎｣
｢うん｣
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作者名：刹那 | 作成日時：2023年7月29日 8時
