947話 ビックリするじゃないか!! ページ17
「あのさ、僕に気を遣ったのかもしれないけど大きなお世話だから。あっちに行ってくれる?」
思春期特有の冷たい態度。楽しい彼らを見て穏やかだった心だったが、いざその人物の1人と喋るとなるとどうしても生意気になってしまう。しかし罪悪感は三郎の中には無い。本音でもあるのだから
そんな三郎に対し、理鶯は意に介さず微笑みを崩さなかった。軍人──いや、大人にとって思春期の子供の反抗なんて可愛らしいモノだからだ
「少し誤解があるようだ。小官は少し休憩をしようとここまで来たのだ。そのついでに貴殿に尋ねただけだぞ」
「軍人のクセに休憩って。鍛え方が悪いんじゃないの?」
「ふふっ、そうかもしれないな」
三郎の中では否定してくるモノだと予想していた。しかし理鶯は同意し、自嘲気味に目を細めた。意外過ぎて三郎は目を大きくして、パチクリと瞬く
そんな三郎に気付いてか否か、蒼い双眸は盛り上がる彼等へ向けられている。穏やかで、色に反して温かい光を宿した瞳。ソレはとても綺麗で、三郎の息が詰まった
「………休憩だと嘘をつき、ここから彼女を見たいなどと我欲を捨てきれず行動するとは………小官はまだまだ鍛え足りないらしい」
「……うわぁ…ホントAさんって危険な奴らに囲まれてるよね…………」
穏やかだと思われた光はドロドロに欲が溢れる光に変わっていた。微笑みも狂気にしか捉えられず、三郎は口を引き攣らせる
だが理解出来ない訳ではない。彼女の様子は遠くからでも面白い。現に目の前で兄の二郎と一緒に盛り上がっている
「あぁー!!兄ちゃん惜しい!!」
『一郎さんナイスシュートでしたが、凄い反射神経ですよ左馬刻さん!!』
「左馬刻の奴すっげぇ疲れてきてるし、次決められるよ兄ちゃん!!」
『2人共息を切らしながらも真剣なのカッコイイですっ!!────ハッ!!動画チャンスじゃないですか!!』
「うわホントだ!!こんな兄ちゃん中々見れないし、俺も撮ろうっと!!」
「ふふ、お2人がそんな事言うから彼等がより一層燃えてますよ」
似た者同士なのか賑やかな2人は見てて楽しい。思わず三郎が表情を綻ばせると、隣の軍人は即座に反応した
「皆楽しそうだな」
「っ、そ、そうだな。お前らがいる事は未だに気に食わないけど、一兄が楽しそうだし良しとするか」
「彼女があんなに笑顔になれてるのは貴殿らのおかげだ。感謝するぞ」
「おお前はホントきゅ、急に言うなよ!ビックリするじゃないか!」
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年7月29日 8時