914話 その言葉、嘘じゃねぇだろうな? ページ34
怒鳴った反動か、左馬刻の持つ袋がガサガサと音が鳴る。見た目からも音からも質量を感じさせるソレは、どうやら詫びの品らしい
戸惑いで動きが鈍い一郎だが、しっかりと品を受け取って鋭い紅い視線と交え合う
確かに左馬刻は昔から筋を通す男。形は色々と問題はあれど、されたらされっぱなしでは無く、必ず何かを返す。その生き方はまだ未熟だった自分の中でカッコよく憧れの姿であった。だからこそ今もその生き方に拘るし、例えどんなに恨みがあろうとも変えたくなかった
一郎の目は動揺で激しく揺れている。目の前の男が昔の左馬刻と重なって見えており、懐かしさと悲しさ、そして寂しさが胸を苦しくさせていた
「わ……悪かった……?」
必死に頭を回して言葉を絞り出す。しかし結果として左馬刻の言葉を一部復唱するのが限界だった。そんな彼の心情に気付かない左馬刻は、盛大な舌打ちをしてもう一度大声を上げた
「チッ、折角の楽しかった時間を俺様が台無しにしたから、それの詫びに来たんだよ!!一々説明させんじゃねぇよ!!一発で理解しろやダボッ!!!」
この素っ気無さはただ自分を単に嫌ってるからだけではなく、不器用さが仇となった結果だった。漸く気付いた一郎の視線は、自然とAへ向いていた
「え、えぇ……と、何があったんだ……A…」
『ふふん、話し合ったんですよっ!左馬刻さんと私の意見をちゃんと言って、お互い理解し合えたんです!そしたら左馬刻さんが一郎さん所にも行くぞって』
「コソコソ会ってた事は今でも気に食わねぇが、世話になってたンならそれとかの礼も言わねぇとだろ。それにコイツとダチになりてぇって、お前言ったんだろ?」
鋭い眼光が一郎を射抜く。その光は敵意では無いが、何が別の圧があると一郎は感じた
「………その言葉、嘘じゃねぇだろうな……?」
左馬刻の言葉に、一郎は息を詰まらせた。
それはその言葉が嘘だからという理由では全くない。しかし何故だと聞かれると本人ですら答えられなかった。胸の中で溢れる泥のような感情。形容し難い感情を押し殺し、一郎は左馬刻へ睨み返した
「たりめーだ。オートマタとかそんなん関係ねぇ、俺はAとダチになりてぇんだよ。俺だけじゃねぇ、二郎も三郎もだ」
一郎の嘘偽り無い言葉に目を眇める左馬刻。対して目を大きくして『〜〜!!!』と言葉に出来ない声を上げるA
その中で続いて声を出したのは、3人の中ではなく学校から帰ってきた2人だった
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刹那(プロフ) - クリームソーダ好きさん» クリームソーダ好きさん!応援ありがとうございます!これからも楽しんで頂けるよう頑張ります! (7月8日 17時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
クリームソーダ好き - とっても面白いです、!応援しています! (7月8日 11時) (レス) @page39 id: 4c76633c5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年6月4日 10時