908話 何を信じれば良いんだ ページ28
「アイツを信じてた昔の俺を信じる……?」
内容がイマイチ理解出来ず、ただ彼女の言葉をオウム返しをした左馬刻。そんな彼に『はいっ』と微笑み、言葉を続けた
『雑誌で調べました。一郎さんとはMCDと呼ばれる4人チームから始まり、伝説のチームTDDまで一緒に居たんですよね。その時の左馬刻さん、凄く笑顔でした。一郎さんも心の底から笑ってました!私は!その2人の笑顔が嘘じゃないって信じてるんですっ!!』
実の所Aは、寂雷に昔チームを組んでいたと聞いた後、DRBが特集された雑誌を探し過去のチームについて調べていた。ヒプノシスマイクとラップバトルが全国民に浸透し始めていた僅かな期間だった為、TDDとMCDの情報量は微々たるモノだった。しかし、左馬刻の妹──合歓が撮ったとされる写真は、彼の部屋にありAはそれを見ている
憶測の範囲から出ない話だが、乱数の勇気ある告白、左馬刻の部屋にあった写真、一郎の思い、全ての
思いが勢いを増し、遂にはAは体を起こして左馬刻に対して前のめりになって語り出す。あまりの圧に左馬刻は若干仰け反り、しかし表情は重々しく静かに聞いていた。やっと意味を理解した彼は、段々と俯き独り言を零し始めた
「一郎は…合歓を……。いや……アイツはそんな事……。でも合歓はアイツの名前を……」
壊れたロボットの様に、文脈として成立していない言葉を吐き続ける。目は虚ろ、口は震え、これ以上の理解を拒絶している様だった
何かに対し恐怖するかの様に左馬刻は震える手で頭を抱える。暫く独り言が続けば、突如として黙り込んだ
恐る恐るAが彼の顔を覗き込むと、虚ろだった目がAを捉える。思考が正常になれたのか目に光が戻れば、ゆっくりと手を下ろしまたポツリと零した
「………俺は何を信じれば良いんだ…」
鉛のように重たい言葉。短い文ながら彼の心情が痛々しい程に伝わるモノだった
苦楽を共にした弟分を信じるか、命より大事な妹を信じるか。昔の自分か、今の自分か。揺れ動く左馬刻には分からなくなっていた。───いや違う。決める事を恐れていた
そんな彼の心情を察したAは、包み込む様に彼を抱き締めた。大丈夫だと言い聞かせる様に背中を擦った
『左馬刻さん、今すぐに決めなくていいんです。焦ってしまえば、見失いますよ』
「っ……A…」
彼は助けを求める様に抱き締め返した
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刹那(プロフ) - クリームソーダ好きさん» クリームソーダ好きさん!応援ありがとうございます!これからも楽しんで頂けるよう頑張ります! (7月8日 17時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
クリームソーダ好き - とっても面白いです、!応援しています! (7月8日 11時) (レス) @page39 id: 4c76633c5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年6月4日 10時