902話 だからその状態で行ったのかよ…… ページ22
ガサガサ、コト、ガサガサ
袋から食材を取り出し冷蔵庫の中へ詰めていく。単純な作業を左馬刻は黙々と行っていた。彼の中ではAをリビングか寝室で寝させたかったが、Aはそれを拒否。きゅ……と彼の裾を握り、静かな抵抗をしたのだ
彼女の中ではやっと会えた人。1秒でも離れたくない
それ程深い傷をつけたと左馬刻は見られないように歯を食いしばり、自分自身に怒りを顕にした
会話も無いまま何個か食材を詰めた頃、食材に紛れてとある物が姿を現した
｢っ、弁当箱……？｣
シンプルな見た目ながら何処か温かみのある木の曲げわっぱ弁当箱。比較的大きい為、これが誰用かなんて一目瞭然。弁当箱を取り出し、視線だけで聞けばおずおずと答えてくれた
『えと、そっちの方が届けられますし……。もしいらないって言われても……持って帰れるので……』
まだ彼との接し方の正解が分かっていない。不安が残っているのか合わそうとしていた視線も無意識の内に逸らし、再び左馬刻の裾を握っていた
｢……そっか。色々と考えてくれたんだな……｣
本来なら要らねぇって言う訳ねぇだろうが、と言えるが、今回ばかりはそう気を遣ってもおかしくない状況。否定の言葉は飲み込み、代わりにA自身を肯定する言葉を出した。そして裾を握る小さな手を優しく掴み取り、穏やかな表情で弁当箱を持たせる
｢ならこれからよ、俺様の昼ご飯作ってくれねぇか？｣
『っ！！！い、良いんですか！？』
余程嬉しかったのか、Aは表情を180°変えてパアッと久しぶりの笑顔を咲かせた。漸く見れた笑顔に｢おう｣と短く返した左馬刻。漸く空気が明るくなり始めてきた
｢つーかお前弁当作れんのか？｣
『弁当は作った事はないですけど……料理なら出来ます……。この本には弁当にピッタリな物もあったので練習をすれば美味しい弁当が作れる筈です…！！』
｢ははっ、だからその状態で行ったのかよ……。治るまでにアイツらに隠れて練習しようと｣
『そ…そうです……。今日は遅くなると聞いていたので、帰ってくるまでに作って食べてしまえばバレないと……』
｢アイツら舐め過ぎだろ。物が少しでも動いたら気付くぞ、匂いなんて尚更な｣
『そ、それは……流石ですね……』
それはAが関係すれば余計にだが、それは本人が知らない事である。靴が無かっただけで3人共あの慌てようなのだから、自分達の執着心は酷い物だと左馬刻は苦笑いな彼女を見下ろしながら作業を再開したのだった
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刹那(プロフ) - クリームソーダ好きさん» クリームソーダ好きさん！応援ありがとうございます！これからも楽しんで頂けるよう頑張ります！ (7月8日 17時) (
レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
クリームソーダ好き - とっても面白いです、！応援しています！ (7月8日 11時) (レス) @page39 id: 4c76633c5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：刹那 | 作成日時：2023年6月4日 10時
