900話 馬鹿だろ…… ページ20
｢お前………それ……｣
静観していた左馬刻はポツリと零す。先程までどう喋ろうか、どう接しようか悩んでいた左馬刻。なのに想定外の展開が起こり、考えていた事全てが意味をなさなかった
だが不思議と言葉は溢れてきた。同時に胸に込み上げるモノもあった。震える声で、自信が無い足取りで彼女に近づく
『っ……あ、あぁ……さ、左馬刻……さん……』
同じく彼とどう関わろうか悩んでいたA。頭の中では風邪が治った後の予定だった。しかし今目の前にいる。伏せ目気味な紅は彼女の持つ物を見ている。暗くてそれに気付いていないAは、頭が真っ白な中でただただ名前を呼ぶ事しか出来ない
心が落ち着き空気を察した銃兎はAから距離を取り、左馬刻とAだけの世界にさせた
『えっと……その……』
｢覚えてたのか、それ……｣
『えっ……』
左馬刻は徐にAが持っていた物───食材が入ったビニール袋を指差した。冷蔵庫にご飯はある。なのに何故外に出たのか。理鶯と銃兎は眉を顰めるが、後に食材の中に紛れた1冊の本に気付いた
それにより銃兎は首を傾げるが、理鶯は心当たりがあったようで目を丸くする
────“簡単に出来る定番料理！”
美味しそうな料理達の写真の表紙。ポップな字体でそう書かれていた
料理が得意な理鶯がいる為すぐに聞く事ができ、今ではネットでも調べる事が出来る。料理本なんて中々買う事が少ない時代。何故彼女がその本を持っているのか
そう。左馬刻がAと初めてショッピングモール──本屋へ行った日。彼が彼女に買い与えた本だ
そして、約束をした本でもある
────“なら次は俺様になんか作ってくれや。この前やったレシピ本に簡単な料理載ってただろ？”
他愛ない話の1つだった。それを目の前の人物は果たそうと態々外に出た。理不尽に怒られ遠ざけられたのに。それでも………
左馬刻は目頭が熱くなりながら小さく吹き出した
｢っ……は、はは……。お前……馬鹿だろ……｣
『だ、だって……私……左馬刻さんと…また……！！』
────彼女の言葉を最後まで聞くよりも先に、左馬刻は強く、強く抱き締めた。息を呑む音、そして漏れ出す嗚咽。全てが左馬刻の鼓膜に触れる。顔を見れなくても今彼女はどんな表情をしているか、簡単に分かってしまう
また左馬刻は小さく吹き出した
｢………こんなクソ野郎との約束、守らなくても良いだろうが……ダボ｣
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刹那(プロフ) - クリームソーダ好きさん» クリームソーダ好きさん！応援ありがとうございます！これからも楽しんで頂けるよう頑張ります！ (7月8日 17時) (
レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
クリームソーダ好き - とっても面白いです、！応援しています！ (7月8日 11時) (レス) @page39 id: 4c76633c5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：刹那 | 作成日時：2023年6月4日 10時
