899話 帰宅 ページ19
取り乱している銃兎は反対に、泰然自若な理鶯はスマホを取り出し電話を掛け始める
唯一状況が飲み込めない左馬刻は戸惑いの表情で2人に近付いていく。飲み込めていないが故に落ち着いてはいるが、彼の心の中はザワついていた。また失ってしまうのか……?と
「おいお前ら、アイツ風邪ひいてるんじゃねぇのかよ。外に出れんのか?」
「咳は出ていたが平熱ではあった。大丈夫だと判断して出たのかもしれない」
「だ、だが……態々外に出かける用事なんて……」
呼出音が静かな部屋に反響する。何度も繰り返される音は彼らの不安を煽る。短い時間でも長いように錯覚してしまう
早く出ろ、と焦る彼らの予想に反し、慌てて開けられる扉の音が背後からした
『はぁはぁっ、予定より時間が……!!──って……あれ、靴が増えてる……!!?』
聞きたかった声に銃兎は衝動的に動いて玄関へ駆け出した
暗い部屋の奥から大きな影が現れ、自分に向かってくる。Aは短い悲鳴を上げた時には既に銃兎に抱き締められていた
『えっ!?あの、え……!!?』
何が起きたか分かっていないAは目を白黒させて固まる。彼女の体温、心臓の音を感じ取って漸く生きてると分かった銃兎。安堵の表情をしていたのも束の間、沸き起こる感情のままAから少し離れ怒鳴り声を上げた
「何処に行ってたAッ!!心配してたんだぞッ!!?」
至近距離からの怒声にAは反射的に目を閉じて肩を激しく跳ねさせた。その瞬間にビニールの擦れる音が彼女から鳴っていたが、興奮している銃兎の耳には届いていない
『えと……あの、その……』
「完全に治った訳じゃないんだぞ!!もし外で悪化したらどうする───」
「銃兎、もうそこまでにしておけ。貴殿の気持ちも分かるが、感情のままに怒鳴ってはいけない」
彼のパニックの理由を知っている理鶯は再び制止に入る。少し思考がクリアになった銃兎の目に映るのは怯えている彼女。反論は無く、ただ俯いて『すみません……』と謝罪。なんというタイミングで怒鳴ってしまったのだと、銃兎は罪悪感のままにAを抱き締めた
「いえ……私の方こそすみません……。怖かった……ですよね……」
『っ、あ、いえその……私が悪いんです。出るのはダメだと分かってながら……2人が帰って来るよりも先に済ませればいいと出掛けたので……』
こんな状況でも彼女は自分の所為にする。その姿に左馬刻は僅かに俯いた。その視線の先にあったのは───
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刹那(プロフ) - クリームソーダ好きさん» クリームソーダ好きさん!応援ありがとうございます!これからも楽しんで頂けるよう頑張ります! (7月8日 17時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
クリームソーダ好き - とっても面白いです、!応援しています! (7月8日 11時) (レス) @page39 id: 4c76633c5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年6月4日 10時