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898話 誰もいない部屋 ページ18

─────左馬刻の心の準備が少し整った辺り、銃兎の家へと辿り着く。車を駐車場に停めると、3人はタワマンのエントランスに入ろうと足を進める。しかしその途中、理鶯が空を見上げで表情を険しくさせた


「………む?」


不自然に足を止めた理鶯。気付いた2人も遅れて足を止め、訝しげな顔を向ける


「理鶯?どうしましたか?」

「念の為に聞くが、銃兎の部屋はあそこではないか?」


理鶯はそのまま指を差し、銃兎の部屋の場所を口にする。それに銃兎が頷くと、険しかった表情がより険しく、皺を深くさせた


「……部屋の電気が点いていない」

「えっ……。っ!!確かに消えている……」


まだ太陽は完全に落ちてはいない。だがそろそろ電気を点けていないと行動がしにくくなっている時間帯だ。それを証明するかのように、住民が住む部屋の殆どが明るい
体調が悪化したか、それとも早く治るように早めに寝ているかもしれない

そう思ったが、何故か胸騒ぎがする。3人は足早にエントランスを進み、銃兎の部屋へと向かった













目的の扉の前に立った3人は不安な表情を隠せないまま目配せをし、静かに扉を開けた

彼女を置いて行った時と比べ暗い玄関。生活音は全く聞こえず、視線を落とせば靴は何足かはあった。しかしそれらは全て銃兎のモノであり、彼女のモノは見当たらなかった


「────っ!!Aさん!!?」


銃兎は弾かれる様に靴を脱いで部屋の奥へと進む。彼の視界は変わらず暗い。テーブルの上には片方だけ飲まれて空いているPTPと体温計が置かれているだけで、人の気配は無い
思考が定まらなくなった銃兎は荒々しく足音を立てながら部屋中を駆け回る


「A!!おいA!!何処に行った!!?」


寝室、リビング、キッチン。何処にも彼女の姿がない





不自然に暗い部屋、生気を感じられない空間。─────そして机の上に置かれた錠剤。

この状況は彼のトラウマを呼び起こすのに充分過ぎる材料だ。声を荒げ何度も名前を呼ぶ銃兎。過呼吸により思考も視界もぼんやりしてきた頃、走る彼の肩が何者かに力強く掴まれる


「っ!!?」

「落ち着け銃兎、大丈夫だ」


窓から差し込まれる人工的な光に反射する蒼い瞳は冷静だ。仲間を安心させる為の穏やかな口調の彼──理鶯はもう一度落ち着くように促した


「見たところ、荒らされた形跡は無く、Aの靴とスマホも無かった。もしかすると出掛けているのかもしれない。先ずは電話を掛けた方がいい」

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刹那(プロフ) - クリームソーダ好きさん» クリームソーダ好きさん!応援ありがとうございます!これからも楽しんで頂けるよう頑張ります! (7月8日 17時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
クリームソーダ好き - とっても面白いです、!応援しています! (7月8日 11時) (レス) @page39 id: 4c76633c5c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:刹那 | 作成日時:2023年6月4日 10時

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