895話 王の帰還 ページ15
これから裏社会の組織を潰しに行くとは思えないやり取りを行っていたが、話は落ち着いたようだ。視線を交え頷いた2人は行動を始める
─────が、しかし。それは予想外の人物の乱入により阻止された。
｢よォ、銃兎、理鶯……｣
｢なっ！？左馬刻！？｣
倉庫の入り口付近の壁に凭れていたのは左馬刻。彼は伏せていた目を上げ、仲間の方へと視線を向けた。誤魔化す為の煙がない為、赤い瞳の下には隈が鮮明に見えている
情報は流していないのに関わらず現れた左馬刻に、動揺を隠せない銃兎。その傍らで理鶯は淡々とした調子を保ち訊ねた
｢左馬刻、何故ここが分かった？｣
｢優秀な舎弟がいるんでな。ンな事より理鶯、銃兎に送ったって言うルート俺にも寄越せ｣
｢ふざけるな！今のお前だと足でま──｣
｢うるせぇ。本調子じゃ無くてもクソ虫くれぇは潰せンだわ。それに………───｣
壁に凭れていた左馬刻は2人の前に近づくと、突然言葉を詰まらせ視線を逸らし頭を搔いた。だが直ぐにもう一度向き直す。今度は気恥ずかしそうに控え目な視線だ
｢………それに3人の方が早く終わンだろ。さっさと帰らねぇとアイツ風邪ひいてンだろうが……｣
数時間前とは真反対な言葉。だがさっきよりも本心が感じられる声だった
その言葉が出るなんて考えられなかった銃兎と理鶯は目を見開く。そして理鶯は嬉しそうに目を細め、銃兎は肩を竦めて呆れるように笑った
────偉大なるハマの王の帰還を喜ぶかの様に。
｢全く………素直になるのが遅せぇよ左馬刻。思春期の餓鬼だな｣
｢るっせぇ！！いっ、色々とあンだよこっちにも！！｣
｢ふ、左馬刻がいるなら百人力だな。日が落ちるまでにAの元に戻れそうだ｣
｢雑魚共に時間使うのが勿体ねぇ。さっさと行くぞテメェら｣
左馬刻の一言で賑やかだった雰囲気から一変、シリアスな空気が漂った。左馬刻が2人に背中を見せ外へ歩き出すと、2人も続けて進み緋色の世界に溶け込んだ
こうしてMTCの3人が揃えば、哀れな者達に希望など無い。敵という認識では無く、ただ視界に映った虫を潰すような感覚で4つの組織は簡単に潰された
それはただ単に弱かったという理由だけでは無い。前日に左馬刻が暴れたおかげで慌てた売人達が、入念な計画を練らないまま取り引きを行ったからである。無論、計画を練っていれば生き残れたかと聞かれれば、そうでは無い。雀の涙未満の可能性はあったかもしれないが
どちらにせよ、結末は同じである
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刹那(プロフ) - クリームソーダ好きさん» クリームソーダ好きさん！応援ありがとうございます！これからも楽しんで頂けるよう頑張ります！ (7月8日 17時) (
レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
クリームソーダ好き - とっても面白いです、！応援しています！ (7月8日 11時) (レス) @page39 id: 4c76633c5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：刹那 | 作成日時：2023年6月4日 10時
