893話 不安は無い。あるのは─── ページ13
Aの迷いの無い声が伝わったのだろう。二郎と三郎の嬉しそうな息遣いがスマホのマイクにしっかりと捉えられる
いても立ってもいられないAはスマホを耳に当てたまま立ち上がり、体温計を探し始めた。そんな状態だとは知らない2人は喜色を滲ませた声で言葉を発する
《左馬刻は正直ムカつく野郎だけど、Aには関係ねぇ話だしな。仲直り出来るの応援してるぜ！》
《結果、後で教えてよね。一兄心配してるから。一応僕もだけど……》
《俺もだからな！！》
『ふふっ、ありがとうございます。すみません、お騒がせしてしまって』
《謝罪はいらない。こっちが勝手に心配してるだけだから》
《なぁに素っ気ない言い方してんだよ。兄ちゃんから聞いた瞬間、1番に反応してたクセに》
《ばっ！！そ、それはッ！左馬刻がヤクザだから暴力を直ぐ振ると思って……ッ！！僕達の所為で変な争いが起きるのは不本意だから！！》
《はいはいそうですか。でもそれ結局Aの事心配してんじゃん》
《ぐっ！！》
常に冷静で1歩引いた視点から考える彼らしからぬ狼狽えっぷり。とても微笑ましくて口を固く閉ざしても抗えずに小さく吹いてしまったA
それもマイクがちゃんと向こうの彼らへ伝えた
《わ、笑うな！！》
『っふ、ふふっ、ごめんなさい。凄く嬉しくて』
《わわわ笑ってる余裕があるなら仲直り出来るだろうしさっさとして来い！！これ以上一兄を心配させんな！！》
一切の息継ぎ無しでまくし立てた三郎の後に、ダンダンという足音と扉が開け閉めされた様な音聞こえた。それに続いたのは二郎の呆れた声
《素直に心配だって言えばいいのに……。アイツ俺が電話する前まで“Aさん大丈夫かなぁ……”って何回も言ってたんだぜ？》
『そうなんですか？』
《あ、これ三郎に内緒な？また怒るし》
『ふふ、はいっ！』
《じゃあまたなA！今度はシュート練習すっからな！》
『はい先生！宜しくお願いします！』
二郎達との電話が終われば再び部屋は静寂に包まれる。しかし重い空気は全くなく、外から差し込まれる太陽の光もあって晴れやかな空間だ
そんな中でAは体温を計り、表示された数値を見て満足気に目を細めた
『………よしっ、銃兎さん達は帰ってくるの遅いらしいからそれまでに準備を進めとかないと！！』
そう元気な独り言を零せば、彼女はキッチンへ軽やかな足取りで向かった。皆に応援されたAにもう不安は無い。あるのは“決意”のみだ
894話 欲深いのか心配性なのか→←892話 仲直りのヒント
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刹那(プロフ) - クリームソーダ好きさん» クリームソーダ好きさん！応援ありがとうございます！これからも楽しんで頂けるよう頑張ります！ (7月8日 17時) (
レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
クリームソーダ好き - とっても面白いです、！応援しています！ (7月8日 11時) (レス) @page39 id: 4c76633c5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：刹那 | 作成日時：2023年6月4日 10時
