878話 もう心配させてはいけない ページ48
｢眠れそうですか？｣
『はい。さっきも沢山寝てたのに、安心してか睡魔が来ました』
｢ふふっ、そうか。なら寝るといい。小官達はここに居るからな｣
私の右側に寝ている銃兎さんは眼鏡を外した後に私の手を握り、左側で寝ている理鶯さんは私の頭を撫でてくれている
細いのにしっかりとしていて、固く握ってくれる手。大きくてゴツゴツしているのに、撫でるのは割れ物を触るかの様に優しい手。何方も温かくて、胸の中がじん……と形容し難い気持ちになる
───もう心配させてはいけない。
優しく微笑む彼等を見ていたら、言わなきゃと口が動いた
『理鶯さん、銃兎さん。私、風邪が治ったら直ぐに左馬刻さんの所へ行って謝ります』
あの時の夢みたいに拒絶されるかもしれない。それでも謝りたい。そして自分の気持ちを伝えるんだ
2人から息を詰まらせる様な音が聞こえた。でも直ぐに安堵の息が聞こえ、握る手が強くなったり撫でる手が静かに止まった
｢そうですか…。大丈夫、なんですね？｣
『はい』
｢Aが覚悟を決めたのなら応援しよう。きっと左馬刻は貴女の率直な言葉を聞けば、受け入れてくれる筈だ｣
｢あの馬鹿は拗れてますが、根は良い奴だからな｣
｢銃兎がそう言うとは珍しい｣
｢はっ、これでもMTCを結成する前から持ちつ持たれつの関係だったからな。嫌でもアイツの性格は見えてくる。アイツはまだまだ思春期真っ只中の餓鬼だよ｣
｢ふふっ、確かに小官の目でも左馬刻は末っ子の様に見える。Aと接する時は特にな｣
『そうなると中々の乱暴な末っ子ですよ……？』
｢裏を返せば、貴女に良い顔をしたいんでしょうね｣
｢ふっ……気持ちは分からんでもない。不器用な男だ｣
段々と瞼が重くなる。まだ話したいのに、体は休めと命令してくる。抗いたいけど、休まないと風邪が治らない。そうなると左馬刻さんの所に行けない。だから睡魔の言いなりになって瞼を閉じた
────また前みたいに左馬刻さんと喋れる事を願って。
・
｢…………寝ましたね｣
｢そうだな｣
すぅ……すぅ……と安らかな寝息を立てる彼女の頬を、理鶯は愛おしく撫でる
｢全く……健気過ぎだと思いません？左馬刻はAさんを見習って欲しいものです｣
｢そうだな……｣
短気なリーダーを思い浮かべ溜息を吐いた銃兎。部屋は暗く、眼鏡を外していたから彼は気付かなかった。
───理鶯が険しく眉を顰め、何も映さぬ目でAを見ていた事に。
879話 そこまで食い意地は酷くないです！→←877話 謝罪じゃなくて──。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 37人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
刹那(プロフ) - 雪女さん» 雪女さんコメントありがとうございます！十四君のセリフは色々調べに調べて書きましたのでそう言って頂けると嬉しいです！彼の再登場はかなり先になってしまいますが、楽しみに待って頂ければと思います！ (5月26日 10時) (
レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - 続きが気になります更新楽しみにしてます(●︎´▽︎`●︎)十四くんとの絡みよかったです(*^^*) (5月26日 0時) (レス) id: 883542d863 (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - ナミさん» ナミさんコメントありがとうございます！！17章まできてじわじわと忘れられていた過去が明らかになって来てます！！果たしてその過去が全てが明かされた時に何が起こるのか……。夢主ちゃんを可愛いと言っていただけるなんて嬉しいです！！(*´ω｀*)更新頑張ります！！ (2023年3月30日 23時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します｡夢主ちゃんの過去が分かってきてますね!序章のころと比べて明るい夢主ちゃんがかわいいです♡更新も頑張ってください(^^) (2023年3月30日 22時) (レス) @page18 id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：刹那 | 作成日時：2023年3月28日 0時
