866話 ぼーっとします…… ページ36
「どうだA、自分の症状を言えるか?」
『けほっ、えと……せきと、のどのいたみ、あとぼーっとします……』
「そうか……。悪化だけは避けたい。これは神宮寺に見てもらった方が良さそうだな……」
苦しそうに口で必死に空気を取り入れるA。食欲も無ければ、心細いのか何も言わずずっと小官の手を握っている
最低限の栄養を取らせ、脱水症状にならない様にこまめな水分補給をさせているが、やはり診断がなければ放置も危険。少し遠いが、神宮寺に連絡を入れてシンジュクまで向かうとしよう
そう考えた瞬間、外から人の気配を感じた
聞こえる足音から人数は1人。換気の為に開けていた入り口へ警戒しながら目を向けると、その人物は銃兎だった
「理鶯?珍しく外に居ませんでしたが、何か………っ、Aさん!?」
銃兎はおでこにタオルを乗せたAの姿を見るなり、目を見開いて彼女の元に駆け寄った。いつもしている赤い手袋を脱ぐと、頬に手を当てて「熱い……」と呟く
『じゅ…と…さん……』
ヒンヤリしてて気持ちいいのだろう。Aは目を細めて僅かに銃兎の手へ頬を擦り寄せた
けほっけほっ、と止まらない咳に心配そうに眉を顰めた銃兎。彼は視線を彼女から小官に変えた
「風邪、ですか?」
「恐らく。昨日雨に濡れてな……。疲れも溜まっていたのだろう」
「病院は?」
「これからシンジュクへ向かおうと考えていた」
「それなら私が送りましょう。丁度午前は開けていましたので」
「そうか?それは助かる。小官だと、一旦軍の仲間に車を借りなければならなかったのだ」
「では急いで向かいましょう。理鶯、彼女を運ぶのをお願いします」
「了解した」
今は頭痛はしていないらしいが、なるべく振動を与えない様にAを優しく横抱きで持ち上げる。すると落ちるのが怖かったのか、精一杯の力で小官にしがみついた
「A、心配しなくても落とす事はしない。安心してくれ」
そう伝えても彼女はしがみつく事は止めず、ピタッと小官にくっついている。このままでも小官は問題無いが、辛くは無いのだろうか……
心配だが、それよりも病院に早く連れていかなければ
「行きますよ理鶯」と歩き出した銃兎の後を追い掛けた
訓練には丁度良い山道だが、弱った彼女には少しの振動でも悪影響を与えてしまう。現に症状が悪化したのか譫言の様に何かを言っている。何を言ってるかまでは、小官には分からない
『さ…ま……き…さ…ごめ……さい……』
867話 ごめんなさい、ごめんなさい。→←865話 全力で甘えてこい
37人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
刹那(プロフ) - 雪女さん» 雪女さんコメントありがとうございます!十四君のセリフは色々調べに調べて書きましたのでそう言って頂けると嬉しいです!彼の再登場はかなり先になってしまいますが、楽しみに待って頂ければと思います! (5月26日 10時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - 続きが気になります更新楽しみにしてます(●︎´▽︎`●︎)十四くんとの絡みよかったです(*^^*) (5月26日 0時) (レス) id: 883542d863 (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - ナミさん» ナミさんコメントありがとうございます!!17章まできてじわじわと忘れられていた過去が明らかになって来てます!!果たしてその過去が全てが明かされた時に何が起こるのか……。夢主ちゃんを可愛いと言っていただけるなんて嬉しいです!!(*´ω`*)更新頑張ります!! (2023年3月30日 23時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します。夢主ちゃんの過去が分かってきてますね!序章のころと比べて明るい夢主ちゃんがかわいいです♡更新も頑張ってください(^^) (2023年3月30日 22時) (レス) @page18 id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:刹那 | 作成日時:2023年3月28日 0時