【ヒプマイ】オートマタ・イストリア -17章- ナカナオリの仕方

864話 喧嘩なのだ ページ34

小官が励ますように言えば、Aは不安げながらも『本当ですか……？』と首を傾げる。ここで彼女に関して漸く重要な事を思い出した

そうか、Aは初めてだったな……


｢あぁ。今の貴女達は喧嘩(・・)の真っ最中だ。喧嘩をした後は仲直りをするモノだろう？｣

『なか……なおり……』

｢恐らく貴女は一方的に怒られる事が多かったが、自分の意見も主張し喧嘩に発展する事が初めてなのだろう。だからもう会えないモノだと思い込んでいる｣

『っ……』

｢人間誰しも喧嘩は起こりうる。例え親友と呼べる程の親密な関係でもな。それに親友と呼べる者程、喧嘩は起こりやすいモノだぞ？｣

『そ、そうなんですか……？』

｢喧嘩というのは、お互いの意見の対立により起こる。言い換えれば、己の意見を言いやすい相手だと起こりやすい。そうして喧嘩も混じえながらお互いを主張、理解し仲を深めるのだ。今までの貴女は自分の意見を言わな過ぎたのだ｣

『で……でも……』

｢Aは左馬刻に対し、山田一郎と遊びたいと主張した。左馬刻は会って欲しくないと主張し、そのまま帰った。貴女達に足りないのは何だ？｣

『り、“理解”していません……』

｢そうだ。さっきも言っただろう？このままでは関係は崩れてしまう。それだけは防がなくてはならない事態だ。左馬刻を怒らせ、恐怖を抱くのは無理もない。しかしそれを乗り越え、勇気を出し話し合えば、前よりも仲を深める事が出来る｣

『そう……なんですかね……』

｢あぁ。仲直り出来るよう、小官も全力で協力する。偵察は任せてくれ。明後日ではあるが、もう直ぐ始まるDRBの予選に向けてのミーティングがある。その時に様子を見てこよう｣


安心させる為に言った事だが、予想に反しAは俯いて落ち込ませてしまった。彼女の名前を呼ぶと『すみません……』と弱々しい謝罪が。


｢何故謝る？｣

『大事な時期の前にご迷惑を……』


この時でも小官達に謝るとは。もう少し左馬刻の理不尽さに怒ってもいいと思うのだが……。
他人優先の考え方は今までの環境からして仕方無いのかもしれないが、その行為を見ると胸が激しく痛む。早く仲直りをしなければ、Aはずっとこの調子だろう。


｢気にするな。今までも小官達は意見の対立で争った事がある。その時はもっと酷かったモノだ。それはそれは血が流れる位にな｣

『そ、それは凄い…ですね……』

｢比べると貴女と左馬刻の喧嘩は子供の様だ。だから安心してくれ｣

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