863話 それは裏切りでは無い ページ33
抱き締めから数分、Aに僅かな変化が起こった
理鶯の体に手を回したのだ。ぎゅっ、と彼に比べてか弱い力だが、悲しみが込められたモノ。理鶯は割れ物を触る様に優しく頭を撫でて声を掛けた
｢話せないのならいい、だが言わせてくれ。貴女に何があった？｣
あくまでも発言の意思は全てAに委ねる。問題解決の為に聞きたいが、それで苦しめる結果にはしたくないとそう聞いた。するとAは落ち着きを取り戻したのか、それともこのままいるのが申し訳なくなったのか、顔を上げて理鶯から離れてポツリと零す
『もぅ……左馬刻…さんに……会えません……ッ、』
収まっていた涙はその言葉を言い切ると再び溢れ出す。必死に押し込もうと両手でゴシゴシ目を擦る姿は痛々しい。理鶯は両手を掴んで無理やりに止めさせた
｢そんな事をすると肌が傷付いてしまう｣
『良いんですっ、私の肌なんて……ッ。左馬刻さんの方が、ずっと傷付いてる……』
左馬刻が傷付いた……？
左馬刻に暴言を吐かれたと予想していた理鶯は表情を険しくした後、小さく深呼吸して自身を落ち着かせてからAの顔を真っ直ぐ見た
｢左馬刻は簡単に傷付く者では無い。でなければ、火貂組の若頭が務まる筈が無いだろう？｣
『裏切るなって、私に、言ってた……ッ。で、でもっ、私はっ、裏切ったんです……！！』
｢山田一郎と会っていた事か？｣
理鶯がそう聞くとコクリと頷いたA。はらりと流れる涙を代わりに自身の右手で拭ってあげた理鶯は、まるで子供に教育する親の様に穏やかな声色で言葉を紡いだ
｢いいかA、これは貴女の人生だ。例え仲の良い人がその人物を嫌っていたとしても、貴女自身が関わりたいと思えば関わっていいと小官は考える。人間誰しも好き嫌いに違いが出る生き物だからな。決して裏切りでは無い。寧ろ私怨で貴女を縛る左馬刻に問題がある。何故関わってはいけないか聞いたか？｣
『いいえ……ただ偽善者だから、としか……』
｢ならば話し合いをしなければならないな。何故山田一郎に関わってはいけないのか、そして何故貴女は山田一郎と関わりたいのか……。そうして話し合えば、お互い理解が出来る筈だ｣
『で、でも……もう私…左馬刻さんに……会えない……』
｢顔を見たくないと言われたのか？｣
『言われてませんけど……』
｢なら大丈夫だ。左馬刻は感情的になりやすい所があるが、様子を窺えばいずれチャンスが生まれる。だから諦めるな｣
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刹那(プロフ) - 雪女さん» 雪女さんコメントありがとうございます！十四君のセリフは色々調べに調べて書きましたのでそう言って頂けると嬉しいです！彼の再登場はかなり先になってしまいますが、楽しみに待って頂ければと思います！ (5月26日 10時) (
レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - 続きが気になります更新楽しみにしてます(●︎´▽︎`●︎)十四くんとの絡みよかったです(*^^*) (5月26日 0時) (レス) id: 883542d863 (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - ナミさん» ナミさんコメントありがとうございます！！17章まできてじわじわと忘れられていた過去が明らかになって来てます！！果たしてその過去が全てが明かされた時に何が起こるのか……。夢主ちゃんを可愛いと言っていただけるなんて嬉しいです！！(*´ω｀*)更新頑張ります！！ (2023年3月30日 23時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します｡夢主ちゃんの過去が分かってきてますね!序章のころと比べて明るい夢主ちゃんがかわいいです♡更新も頑張ってください(^^) (2023年3月30日 22時) (レス) @page18 id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：刹那 | 作成日時：2023年3月28日 0時
