859話 交わらない思い ページ29
左馬刻の言葉はAに深く突き刺さる
どんな言葉で返せばいいのか、正解が見つからず黙り込むA。俯く彼女を一瞥した左馬刻は舌打ちをした
車内に響くのは軽い音だ。だがAは、込められた感情がその音に全て詰まっていると感じた
『すみません……』
「それは何に対しての謝罪だ。俺に黙ってた事か?裏切ってた事か?俺よりも一郎を選んだ事か?」
『選んだなんて……!!』
左馬刻の言葉に思わず反応し声を上げたA。しかし、こうして一郎達と遊んだという事自体選んだ様なモノだ。直ぐに自分は反論する資格が無いと再び俯いた
車は木々に囲まれた車通りの少ない道路へ入る。そこから数分経った頃に路肩へ寄り停車する。理鶯の野営地へ続く森の入り口に着いたのだ
相変わらず雨は降っている。そして日も暮れて暗くなり、冷たい空気が肌を冷やす
「………A、もう一郎に会うな」
Aを車から降ろす前に、ポツリと静かに左馬刻はそう口にした。その言葉にAは考えるよりも先に体が動いてしまう
『っ!ま、待って下さい!何で──』
「アイツは偽善者なんだよ!!テメェが関わって良い野郎じゃねぇ!!」
左馬刻とって、合歓は一郎に吹き込まれた所為で自分の元から離れた。だからこそ止めたかった
しかしAは、どう仲違いさせられたかまでは詳しく知らないが、それが中王区が仕向けた罠だと知っている。そうして溝が深まれば中王区の思う壷。それを防ぎたかった
彼女は左馬刻の左腕を掴み続けて訴えた
『考え直して下さい!!彼が偽善者だなんて──』
────彼女が気付いた時には遅かった
今、その発言は、その
「っ!!煩ェッ!!!」
『ぅあ゙っ !!』
掴まれた腕を怒りのまま振り払った左馬刻。その拍子にAは後方に吹き飛ばされた。ドゴッ、と鈍い音が狭い車内で反響する
Aの後頭部がガラス窓にぶつかったのだ
痛みは多少あれど、ガラスは割れず血が流れないくらいの軽傷。一瞬表情を歪ませ声を漏らしたが、謝らなければならないと左馬刻を顔を見た───
「っ……は……ッ、?」
────Aは声が出せなかった
目の前の彼は信じられない様子で、震える自身の左手を見つめていたから
「ち……違う、俺……は……お…れ、は……」
先程の怒気は姿を消し、弱々しく呟かれる言葉。それは雨音に掻き消されAの耳に届かない
動揺する目は一体誰を見ているのか
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刹那(プロフ) - 雪女さん» 雪女さんコメントありがとうございます!十四君のセリフは色々調べに調べて書きましたのでそう言って頂けると嬉しいです!彼の再登場はかなり先になってしまいますが、楽しみに待って頂ければと思います! (5月26日 10時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - 続きが気になります更新楽しみにしてます(●︎´▽︎`●︎)十四くんとの絡みよかったです(*^^*) (5月26日 0時) (レス) id: 883542d863 (このIDを非表示/違反報告)
刹那(プロフ) - ナミさん» ナミさんコメントありがとうございます!!17章まできてじわじわと忘れられていた過去が明らかになって来てます!!果たしてその過去が全てが明かされた時に何が起こるのか……。夢主ちゃんを可愛いと言っていただけるなんて嬉しいです!!(*´ω`*)更新頑張ります!! (2023年3月30日 23時) (レス) id: 474b3cc025 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します。夢主ちゃんの過去が分かってきてますね!序章のころと比べて明るい夢主ちゃんがかわいいです♡更新も頑張ってください(^^) (2023年3月30日 22時) (レス) @page18 id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那 | 作成日時:2023年3月28日 0時