【ヒプマイ】オートマタ・イストリア -17章- ナカナオリの仕方

844話 微笑ましい喧嘩はニヤケますね ページ14

｢はい、そんなに欲しいなら素直に言えばいいじゃん｣

『え、』


何も言っていないのに、三郎さんは呆れるように私の目の前に青色の駒を置いた。驚いたまま彼の顔をみれば、｢分かりやすすぎ｣と溜息を吐かれる


｢他のを選ぼうとしてる割にはチラチラ青色見てる。誤魔化すならもう少し視線を気にしたら？｣

『成程……』

｢はっ、素直に言えばいいってお前が言うなっての。さっきから照れ隠しでツンケンしてよ｣

｢ばっ！そ、そんなんじゃない！！低脳のくせに僕に偉そうな事言うな！！｣

｢はぁ！？俺の方が上なんだから偉そうにしてもいいだろうが！！｣

｢年齢なんてただの数字だ！！というか僕よりも長く生きて低脳って酷いんじゃない？｣

｢んだと！！｣


突拍子も無く2人の喧嘩が始まってしまった。ボードゲームが広がるテーブルを挟んでいるおかげか、立ち上がれど取っ組み合いとはいかず、激しい言葉の攻防が繰り広げられている

｢お前ら……｣と頭に手を当てて呟く一郎さん。だが直ぐに気付いた様に目を見開いて悪戯っ子の笑みを浮かべた


｢二郎、三郎。Aが来て舞い上がる気持ちは分かるが、少し落ち着け｣

｢なっ！？｣
｢ぶはっ！？｣


太陽の様に明るい笑顔で言い放たれた言葉に、三郎さんと二郎さんは同じタイミングで声を上げた。あっという間に顔全体が赤く染まれば、仲良く必死に一郎さんへ弁解をし始めた


｢ちちち違うって兄ちゃん！！｣
｢舞い上がってません！！通常運転です！！｣
｢そうだぜ！三郎との喧嘩はいつも通りでしょ！？｣
｢そもそも突っかかる二郎が悪いんです！｣
｢はぁ！？それを言うならAに対してツンデレしてるお前から始まってんだろうが！｣
｢誰がいつツンデレした！！｣


まるでテンポのいい漫才を見ている気分だ。喧嘩する程仲がいいとはよく言ったものだ。微笑まし過ぎて口元がふにゃふにゃしてしまっている。バレないように隠さないと

お茶を飲むふりをしてニヤけているのを隠す私を横目に、一郎さんは はっはっはっ、と大きく笑っている


｢分かった分かった。そういう事にしといてやるよ。ほら、早くしねぇと遊ぶ時間が無くなっちまうぞ？｣


尤もな事を言われた2人は口篭り渋々という形で座った。流石お兄ちゃん、2人の接し方を分かってらっしゃる

状況が落ち着いた事で皆それぞれ好きな色の駒を取っていき、スタートエリアに乗せた
順番決めは勿論ジャンケン。口喧嘩とは違う、4人の元気な掛け声が事務所内に響いた

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